投資をされている方の悩みの1つが「現金比率をどの程度にすればよいのか?」というものです。
最近は老後資金の確保などを目的に長期的にインデックス投資で資産形成されている方が増えてきています。
そう言った方が投資を始めて徐々に資産形成に慣れてくると、現金比率を気にするようになります。
そこで本記事ではインデックス投資をする際の現金比率について解説していきます。
インデックス投資とは?
まずは現金比率を考える上でインデックス投資の特徴を捉えておく必要があるでしょう。
インデックス投資は日経平均やニューヨークダウと言った指数に連動する投資成果を目指す手法です。
インデックス(指数)は複数の銘柄で構成されていることが一般的です。例えば、日経平均であれば東証プライムに上場する225銘柄で構成されています。
したがって、この指数に連動する商品を1つ購入すれば、間接的に225銘柄を保有していることになります。
インデックス投資では長期では指数が上昇していくことを想定しています。そのため、タイミングを測って投資をするのではなく、毎月1万円など給料の一部をコツコツ積立投資するのが一般的です。
また、指数は複数銘柄で構成されているため、個別株と比較して値動きはマイルドになる傾向があります。
リターンはどれくらいなのか?
インデックス投資では数百や数千の銘柄で構成されている指数に連動する商品を購入するため、一気にお金持ちになることはできません。
しかし、長期的に株式へ連動する指数へ投資ができれば、年率で4%~6%程度のリターンが期待できると言われています。
投資家の間で有名な銘柄に「eMAXISSlim 全世界株式(オール・カントリー)」があります。こちらの銘柄は2023年10月末時点で全世界の株式2,800銘柄以上へ投資できる商品です。
本銘柄は2018年に設定されましたが、毎年のリターンは以下の通りです。こちらは為替の変動も含んでリターンではありますが、大きく変動していることが分かります。
2019年:+26.8%
2020年:+9.0%
2021年:+32.7%
2022年:ー5.6%
長期で見ればリターンは一桁台へ落ち着きますが、単年でみれば数十%単位で増える年もあれば、2022年のようにマイナスの年もあります。
このように個別株よりもマイルドな値動きをするものの、大きな資産変動があるのが株式指数への投資です。
現金比率に悩む理由!
それでは現金比率に悩む理由とは一体何なのでしょうか?
以下では現金比率になぜ悩むのかその理由を整理していきます。
理由1:鉄板は年齢✖️%
現金比率の鉄板の助言と言えば「年齢✖️%を現金で保有する」と言うものです。
例えば、1,000万円の金融資産を保有していた場合の現金保有額を以下のように設定します。
30歳:300万円
40歳:400万円
50歳:500万円
60歳:600万円
まだ働く期間の長い若い世代はリスクをとって投資割合を増やし、老後を間近に控えた50代や60代は現金比率を高める提案です。
一見すると非常によい提案のように思います。
しかし、仮に50歳で1億円を保有されている方がいたらどうでしょうか?
このルールに則れば、5,000万円を現金で保有する計算です。5,000万円もの大金をほぼ利子のつかない現金で保有しておくことは勿体無い気もします。
上記は極端な例ではありますが、年齢%の提案は資産額などにも左右されるので一括りに考えることができないのです。
理由2:人によってリスク許容度が違う
人によってお金に対するリスク許容度が違う点も悩ましいでしょう。
投資をしていると株価の変動に一喜一憂してしまう方々がいます。一方で、中には暴落が来ると安く株が買えるので喜ぶ方もいます。
つまり、人によってお金に対する感じ方は千差万別なのです。
投資をして徐々に慣れていけばリスク許容度は多少高まるかもしれません。しかし、やはり個人差が大きいので一般的な提案から外れる人達が必ず出てきます。
理由3:周りの声に惑わされる
インターネットの発達により著名な投資家の行動をすぐにキャッチできるようになりました。
例えば、投資の世界の有名人と言えばバフェットがいますが、彼は投資の神様とも言われるような方です。
彼が現金比率を高めれば、SNS上では大騒ぎになります。その結果、不安になり本当に自分はこの現金比率でよいのかと考えてしまうものです。
また、テレビなどを見れば、経済の専門家が不安を煽ったり、自信満々に今は売り時だの買い時だの発信しています。
こう言った話を聞いてしまうと、自分のポジションが正しいのか不安にならない方がおかしいのかもしれません。
理由4:投資手法は無数にある
本記事では万人におすすめできるインデックス投資に焦点を絞っています。
しかし、世の中には無数の投資手法があります。
例えば、高配当の株式へ投資する高配当株投資があります。こちらは株価が下がった時に利回りが高くなった銘柄を購入していく手法です。
したがって、暴落時にたくさんの株を購入できるように待機資金として現金をある程度保有しておく必要があります。
このように投資手法によっても現金比率の考え方は大きく変わります。この辺りをごっちゃにしてしまうと現金比率に対する答えが導き出せないのです。
現金比率をどのように設定すればよいのか?
それでは具体的に現金比率はどのように設定すればよいのでしょうか?
ここでは「資産形成初期」、「資産形成期」、「リタイア期」の3つのステージに分けて著者の考えをご紹介していきます。
資産形成初期
まず資産形成初期では生活防衛資金を貯めることが先決です。
例えば、30歳で貯金が10万円の方が、現金比率を30%に設定して投資に7万円を回すのはリスクが高すぎます。なぜなら、預金が3万円しか無くなってしまうからです。
そこでまずは日々の生活に困らないように半年~2年程度の生活費を貯めることが先決です。
年間の生活費が250万円なら125万円~500万円程度の現金を保有している状態を作るのです。
一方で、それだけのお金を貯めるまで投資を始めないのであれば、いつまで経っても投資の経験を積むことができません。
そこで、例えば月2万円を貯金に回せるのなら、そのうち5,000円は投資に回すなど少額で投資をしながら生活防衛資金を貯めていくのです。
この時期は現金比率について意識する必要はなく、少額の投資で経験を積みながら貯金して生活防衛資金を貯めていけばよいのです。
保有すべき現金の目安:半年〜2年程度の生活費
資産形成期
生活防衛資金がある程度溜まってきたら、次にやるべきことは投資の割合を増やして資産形成を加速させることです。
例えば、2年分の生活防衛資金を確保できている状態にまで到達したのであれば、余剰資金のほとんどは投資に回すような形にします。
インデックス投資はタイミングを見計らって投資するのではなく毎月たんたんと投資を継続していく手法です。
したがって、現金を多めにしておいて暴落時に投資額を増やそうという考えは得策ではありません。
生活防衛資金をきちっと確保できたのであれば、あとはひたすら全額投資でよいのです。
保有すべき現金の目安:2年程度の生活費
リタイア時
当然のことではありますが、リタイアすると会社からのお給料はなくなってしまいます。
したがって、リタイア以降は今まで貯めてきた金融資産に依存して生活することになります。
暴落時には金融資産の評価額が大きく減少する可能性があります。株価が下がった時期には取り崩す額を抑えた方が資産が枯渇する確率を下げることができます。
そこで、資産形成時よりも生活防衛資金を多めに設定する必要があります。
個人的には生活防衛資金を4~5年程度まで高めるのがおすすめです。
なぜ5年程度かと言うと、実は100年に一度と言われたリーマンショックでの株価回復に4年以上かかったデータがあるからです。
したがって、運悪くそのような大きな暴落にあっても取り崩し額を抑えられるように、4~5年程度の生活費を確保しておくのがよいでしょう。
リタイアを意識し始めたら現金を少しずつ増やしていき、4~5年程度は生活できる現金を用意しておくのです。
保有すべき現金の目安:4~5年の生活費
大きなイベントでの支出は別途用意する
もし、その他大きなイベントでの出費が想定されるのなら、その分の現金は追加で用意しておくことが重要です。
例えば、子供の学校での入学金が想定されれば、生活防衛資金にプラスしてその分を現金で保有しておくのです。
資産額が大きくなろうが基本的にはこのスタンスで必要な現金を考えておけばよいのです。
現金比率という考え方ではなく年間生活費を基準にした方が多くの方に適用できます。
日本人は預金しすぎなのか?
日本人は世界的に見ても預金好きであることが知られています。
日本銀行が実施した「資金循環の日米欧比較」によれば、日本は預金率は50%以上と高いことが分かります。
- 日本:54.2%
- 米国:12.6%
- ユーロエリア:35.5%
出典:資金循環の日米欧比較
預金率が低ければ低いほど良いわけではないので一概には言えません。しかし、諸外国と比較して日本人は高い預金率であることが分かります。
昨今のインフレや円安の状況を考えれば、現金比率が高すぎるのも考えものです。
まずは無収入でも数年暮らせる生活防衛資金を確保することが先決ですが、やはりその後はできるだけ投資への割合を高めていきたいところです。
まとめ
本記事ではインデックス投資における現金比率の考え方をご紹介しました。
現金比率で考えるのではなく基本的には年間生活費をベースに考えた方が多くの人に適用しやすいルールになるでしょう。
おすすめは資産形成時には2年程度の生活防衛資金を確保しておくことです。
そして、リタイアする頃には4~5年程度の生活費まで現金保有額を高めておくべきです。こうすることで暴落時や不況時にも運用資産を取り崩しを最低限にして生活することができます。
以上、ご参考になれば幸いです。