海外転勤や海外移住した場合、日本の証券会社で保有する株式等はどうなるのでしょうか?
グローバル化に伴い海外転勤の可能性がある会社にお勤めの方も多いのではないでしょうか。また、私のように将来海外に住んでみたいと考えている人もいるかもしれません。
一方で、日本の証券会社や銀行は日本に住んでいない「非居住者」に対して非常に冷たい態度を取るのも事実です。
本記事では、主要ネット証券各社の海外転勤時の取り扱いについてまとめました。海外転勤の可能性がある方は、楽天証券へ口座開設しておくことをお勧めします。
(本記事は2022年2月24日時点の情報を元にアップデートしました。)
海外転勤が決まると保有する株式等はどうなるのか?

主要ネット証券であるSBI証券、楽天証券、マネックス証券の非居住者の取り扱いについて確認していきたいと思います。
各社の取り扱いを簡単に整理すると以下の通りです。
- 非居住者になると基本的な取引はできない
- 3社とも取引は制限されるものの金融商品を保有し続けることができる
- 楽天証券は特定口座/NISA口座の維持が可能
- マネックス証券/楽天証券は出国前に海外株式を売却しなければいけない
日本の「非居住者」になると、日本の証券会社では基本的に株の売買ができません。ただし、一時的に「非居住者」になるのであれば、帰国するまで株式等をそのまま保有することが可能です。
以下では、各証券会社の対応について詳細に確認していきたいと思います。
SBI証券
SBI証券では、海外転勤時も口座を保持して投資商品を保有し続けることが可能です。
当社に証券総合口座をお持ちのお客様が、海外勤務等の理由により一時的に出国「(本邦)非居住者」される場合、出国後のお取引については制限がございますが、原則、帰国されるまでの間も当社の証券総合口座(お客様名義)にて有価証券等をお預けいただくことが可能です。
一方で、帰国した際の詳細については記載されていません。例えば、保有していた商品を「特定口座やNISA口座」へ戻すことができるかなどです。
海外へ出国する場合、SBI証券では「特定口座」で上場株式等を管理し続けることはできず、「一般口座」での管理となります。
この場合、帰国後に「特定口座」に戻してもらえるかどうかは非常に重要です。なぜなら、仮に一般口座のままであれば、帰国してからは税金の計算などを全て自分で行う必要が出てくるからです。
SBI証券を利用されている方は、出国時に特定口座で保有していた商品が「特定口座にきちんと戻してもらえるのか」を出国前に確認すべきです。
楽天証券
2020年に最初にこの記事を書いた時と比較して、楽天証券では海外赴任の取り扱いにおいて改悪となってしまいました。
楽天証券では、出国期間に基づいて下記の通り口座を維持できるかどうかが決まります。特に、5年以上あるいは期間未定の方は口座の維持はできません。
出国予定期間 | 手続き |
---|---|
1年未満 | 手続きは不要 |
1年以上〜5年未満 | 事前手続きで維持可能 |
5年以上 | 口座維持不可 |
期間未定 | 口座維持不可 |
(出典:楽天証券HP) 注:渡航先が米国の場合は1年未満でも事前の手続きが必要な場合あり。
また、楽天証券では出国期間が1年以上〜5年未満であれば、「特定口座及びNISA口座の継続利用」が可能と記載されています。これはSBI証券やマネックス証券には記載されていないことです。
しかし、以下の問題もあります。
ご出国の2週間前までにご対応いただくこと
①日本株式、個人向け国債のみ保有いただけます。その他の商品は売却してください。
出典:楽天証券HP
楽天証券では、出国期間中は国内株式か個人向け国債しか保有することができません。高校中退投資家のように米国株をメインで保有している方にとっては、楽天証券の魅力はがくっと下がってしまいました。
マネックス証券
マネックス証券では、所定の手続きをすれば休眠口座として口座を維持できるものの、楽天証券と同様に外国商品は出国前に売却する必要があります。
- 外国商品や信用建玉などを保有されている場合は、出国前に売却・決済していただくようお願いいたします。
- 特定口座や非課税口座(NISA)は国内居住者が利用できる制度のため、廃止させていただきます。
出典:マネックス証券HP
「特定口座やNISA口座は廃止が必要」と記載されています。楽天証券では特定口座やNISA口座は事前の手続きで継続できると明記されていますから、なぜマネックス証券ではできないのかよく分かりません。
日本株や投資信託のみの方であれば問題ありませんが、外国株を保有されている方は楽天証券同様にマネックス証券ではダメです。
海外転勤時にどうすればよいのか?
楽天証券で日本株を保有、SBI証券で外国株式を保有!
結論として海外転勤などの可能性がある人は楽天証券に口座を開設しておくべきです。特定口座やNISA口座が維持できると明記されているからです。
一方で、問題は外国株をメインに保有されている方です。楽天証券やマネックス証券では外国株を保有できないからです。
その場合はSBI証券へ株式の移動を検討するのがよいでしょう。下記記事でもご紹介しましたが、証券会社間の株式の移管手続きは非常に簡単です。

SBI証券では米国株式を他社から受け入れる際に発生する手数料を全額負担するプログラムを実施しています。つまり、マネックス証券や楽天証券から無料で株式の移動が可能なのです。
海外の証券口座や銀行口座を開設
もう1つ考えておきたいのが、海外の証券口座や銀行口座を開設して投資を継続する方法です。
高校中退投資家の場合はHSBC香港に銀行口座を保有しています。

海外の銀行や証券会社であれば、非居住者であっても投資ができます。ただし、海外口座を管理するには手間がかかるのも事実です。
しかし、「海外赴任中も投資を継続したい」、あるいは「将来海外で生活することがある程度決まっている」方は海外の銀行や証券会社を活用するのも1つの手でしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
海外転勤や海外移住時は日本の証券口座での取引は基本的に制限されます。株の取引はできませんが、楽天証券であればNISA口座や特定口座の継続も含めて維持が可能です。
一方で、楽天証券では外国株式の保有はできないため、外国株式についてはSBI証券への移管を検討する必要があります。
一定期間海外へ住むことが予想される方や検討されている方は、こういった情報も加味して証券会社を選定するとよいでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
海外転勤や海外セミリタイアする際の銀行口座の取り扱いについては下記記事でご紹介しています。

初めまして、直近で海外駐在の予定があるので、記事勉強になりました。
もし差支えなければお伺いしたいのですが、投資信託や株式をSBI証券→楽天証券に移管した場合、取得価格はどうなるのでしょうか。本記事を拝見して、メインで使っているSBIで保有しているファンドを楽天証券へ移管すること考えましたが、現在ある程度の含み益が出ているので、気になりました。
また、帰国して楽天証券の特定口座が復活した場合の取得価格についても併せてご教示いただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます!
特定口座の場合、SBI証券から楽天証券に移管しても、SBI証券の取得単価がそのまま楽天証券に引き継がれます。
したがって、移管することで税金面で損することはありません。
また、海外から帰国された際も取得単価に変更はないとの理解で良いと思います。
海外駐在の間も特定口座は維持されますので、取得単価に変更が生じる要因はないと理解しています。
ただし、私はSBI証券→楽天証券へ移管した経験はありますが、海外駐在した経験はありません。帰国時の回答はあくまで参考程度にしていただければ幸いです。
dropoutinvestor さま
ご回答いただきありがとうございます。
こうした情報は貴重なので、大変参考になります。
帰国の際の状況については、
機会があったら楽天証券に確認してみます。
もう一つ、こちらは注意点といいますか、
ブログのネタにでもしていただければと思いますが、
楽天証券の場合、
①つみたてNISA,NISAは維持できるが、
②投資信託の分配金を「再投資する」に選択している場合、買い付けが発生するので保有できず、分配金コースを「受取型」へ変更する必要があるが、
③NISAで保有されている投資信託は、分配金コースの変更ができないため、課税口座へ振替後に分配金コースを「受取型」へ変更する必要がある、
という説明になっています。
私もそうですが、ほとんどの方、特に投資を始めた初心者は、楽天VTIなど、分配金が出ない投信についても分配金を「再投資する」ように選択していると思うのですが、そうすると、分配金のコースの変更ができないので、
せっかくコツコツ買い付けてきたNISAやつみたてnisaを、一度課税口座に移す必要があり、節税メリットがなくなってしまいます。
再度nisa口座に戻してもらえるとは考えにくいので、私は当月でつみたてnisaのつみたてをやめて、分配金を「受取」にできるよう、今までとは別の投信を買い付けていくことを考えています。分配金が出ない投信であれば当該選択をしてもあまり問題はないと思いますが、こうした点、今までつみたてをしてきた初心者が割を食うのはいかがなものか、と感じました。
あんじぇろ様
投資信託の取り扱いについて情報をありがとうございます。
確かにつみたてNISAを活用されている方にとっては不利な内容ですね。
実は数年前までは楽天証券は海外転勤時の口座維持は不可という回答でした。
各証券会社の対応は毎年のように更新されていますので、今後改善されていくことを期待したいと思います。
何か新しい情報が得られましたら、本ブログでもアップデートしていきたいと思います。