みなさんの中には週5日の労働をやめて暮らす「セミリタイア」に憧れをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
セミリタイアすればみなさんが現在抱えている会社に係るストレスを解決できるかもしれません。そんなセミリタイアは一体何歳から、そしてどのように目指せばよいのでしょうか?
本記事ではセミリタイアの概要を説明するとともにどのように目指すべきなのか具体的な手順について解説していきます。
1.「セミリタイア」とは一体何?
まずはセミリタイアが一体どういったものなのか確認しておきましょう。
セミリタイアとは「定年前にフルタイムの仕事を辞めて、働く量やペースを減らして生活すること」です。
完全に仕事を辞めてしまうフルリタイアとは違って、ゆるく働き続けることがポイントです。
例えば、週5日の仕事をやめて週数日だけアルバイトをするとか、気が向いた時にウーバーイーツで仕事をするなどして生活費の一部を稼ぐのです。
セミリタイアは労働収入が0になるわけではないので、全く働かないフルリタイアと比較して達成の難易度が大幅に下がります。
会社を辞めた後も一定の労働収入があるため、少ない資産でもセミリタイア生活を実現できるからです。
2. なぜセミリタイアを目指すのか?
2.1 セミリタイアの目的
それではなぜ多くの方がセミリタイアに憧れ、その実現を目指すのでしょうか?
多くの方は会社員としてどこかの企業にお勤めでしょう。しかし、仕事を楽しんでいる方はほとんどいません。
私自身も現在会社員として働いていますが、同僚や友達と話すと以下のような会社への不満をよく聞きます。
「満員電車がきつい」
「上司や同僚との人間関係がうまくいかない」
「毎日残業ばかりで家族との時間を取れない」
「勤務地を選べない」
セミリタイアすることでフルタイムの勤務を辞めれば、責任ある仕事を任されることも減りますし、休暇などもある程度柔軟に設定できます。
つまり、セミリタイアすることで現在抱いている会社への不満やストレスを解決することができます。
2.2 セミリタイアのメリット
セミリタイアをすれば現在の生活を大きく変えることができます。
以下ではセミリタイアにはどのようなメリットがあるのかご紹介していきます。
2.2.1 自由な時間が確保できる
まず第一に自由な時間を確保できる点です。
フルタイムで仕事をしている方の多くは週5日間働いています。1週間のうち休みはたった2日しかないのです。
しかし、セミリタイアして働く頻度を落とせば、週2日働いて5日間を休みにすることもできます。
その結果、大幅に自分が自由に使う時間を増やすことができます。
家族と接する時間を確保できたり、趣味に没頭したりと仕事に縛られることがなくなります。
2.2.2 ストレスを軽減できる
また、仕事で受けているストレスを軽減できることもメリットの1つです。
正社員として働いていれば一定レベルの責任がある仕事を任されます。また、それは年齢とともに上がっていくのが一般的です。特に過度に仕事を任されてストレスに押しつぶされてしまう方も多いでしょう。
また、過重労働も大きな問題です。朝早くから終電まで働くような生活をしていれば、心身ともに疲弊してしまいます。
セミリタイアすればこのような過度なストレスから解放されますので、落ち着いて生活することができます。
2.2.3 柔軟な生き方ができる
セミリタイアをすることで柔軟な生き方が可能になります。
1年のうち何ヶ月か働く期間を決めて、残りは旅をしながら生きるみたいなことも可能です。また、出社の必要性も減るわけですから、地方移住なども容易になります。
両親の介護や子供の世話を生活の中心にするもよし、自分の趣味に時間を割くもよし、自分がこうしたいと思う生き方を自由に選択できるようになります。
2.2.4 社会との関わりを維持できる
セミリタイアは全く働かないフルリタイアと比較して社会との関わりを維持できます。
例えば、仕事一筋だった男性が退職後に廃人のようになってしまうことはよく聞く話です。
仕事の中で人間関係も含めて全て完結されているので、退職後に自分が所属するコミュニティがないのです。
フルリタイアして仕事を全て辞めてしまうと社会との関わりがなくなり苦しむ方も出てきます。
一方で、セミリタイアは引き続きゆるく働くスタイルなので、そのような心配は減るのです。
3. セミリタイアするなら何歳?
では何歳くらいからセミリタイアするものなのでしょうか?
最近はセミリタイアされた方がブログなどで積極的に発信されているケースを多く見かけます。
20代でセミリタイア生活を送る人もいれば、50代になってセミリタイアする方もいます。
当然ながら家族構成なども影響しますので、セミリタイアすべき決まった年齢はありません。
しかし、セミリタイアを目指すのであれば、40代が一つの目安になるでしょう。
以下ではその理由を説明していきます。
3.1 社会人経験がある
セミリタイアは会社を退職した後も一定の労働を継続するスタイルです。
40歳前後の年齢であれば、15年程度の社会人経験があります。したがって、一定のスキルを有しているはずです。
交渉次第では以前勤務されていた会社から退職後も仕事をもらうことができるかもしれません。あるいは、今までの人生経験をもとに小さく起業することもできるでしょう。
ゆるく働くと言っても稼ぐ手段を自分で確立できなければそれはそれで辛いのです。
したがって、それなりの経験を持つ40代は様々な選択肢が取れるセミリタイア適齢期とも言えます。
3.2 セミリタイア資産はすぐに貯まらない
当然ながら一定の資産がなければセミリタイアすることはできません。
なぜなら、少ない資産でセミリタイアすると生活費を確保できずに生活が破綻してしまうからです。
セミリタイア資金は多くはない毎月の給料からコツコツと貯めていく必要があります。
したがって、セミリタイア資金を準備するにはそれ相応の時間がかかるのです。よほど高い給料でなければ20代や30代前半でセミリタイアを達成することは難しいでしょう。
3.3 体力がある
40代であればまだまだ体力があり新しい生活への適応力があります。
まだ気力や体力のある40歳前後の年齢であれば、新しい職探しや新しい生活への適応力があります。
また、仮に正社員として働きたいと思っても復帰できる可能性がある年齢です。
これが50代や定年間近だとしたらどうでしょうか?
セミリタイア生活での仕事と言ってもできることは限られてしまいます。また、再就職の可能性は極めて低いでしょう。
4. セミリタイアに必要な資産
それではどれだけの資金をセミリタイア生活のために準備すればよいのでしょうか?
この問いに対する答えも人それぞれ違います。なぜなら、各々生活費は違いますし、セミリタイア後の生き方も千差万別だからです。
明確な答えを用意することはできませんが、4,000万円前後の資産が1つの目安になるでしょう。
4.1 フルリタイアに必要な生活費
ここでは40歳で会社を辞めた場合を想定して、老後までに必要な生活費を算定します。
総務省統計局が実施した家計調査年報(2021年)によれば、単身世帯と二人以上世帯の生活費は以下の通りです。
単身世帯:約16万円/月
二人以上世帯:約28万円/月
総世帯平均:約24万円/月
現行の年金制度では通常65歳から公的年金を受け取ることができます。そこで、40歳で退職して65歳までの25年間に必要な生活資金を計算します。
単身世帯:16万円✖️12ヶ月✖️25年=4,800万円
二人以上世帯:28万円✖️12ヶ月✖️25年=8,400万円
総世帯平均:24万円✖️12ヶ月✖️25年=7,200万円
上記の必要金額はモノの値段が上がるインフレの影響を加味していません。2023年に入って値上げラッシュでインフレの怖さを実感している方も多いはずです。
加えて、65歳以降は年金のみで生活する想定です。会社を早く辞めれば厚生年金の支給額は高くありませんから、実際にはこの金額よりも多くの資金が必要になります。
このように仕事を完全に辞めて生活するフルリタイアには相当な資金を準備しなくてはいけないのです。
4.2 資産運用するのが一般的
セミリタイア資金を全額貯金するのは得策ではありません。
ここで登場するのが投資です。資産を投資に回すことで配当などの資産所得を得るのです。
投資の世界で有名なルールがあります。それは「4%ルール」と言われるものです。
簡単に言えば、運用資産のうち4%分を毎年取り崩すのであれば、資産はなくならずに長続きさせることができると言うものです。
例えば、セミリタイア資金が4,000万円であれば毎年160万円の資産所得が期待できます。
4,000万円✖️4%=160万円/年
1ヶ月あたりに換算すれば約13万円です。この分だけを毎年使っていけば、老後になっても4,000万円はそのまま残る可能性すらあるのです。
このように投資にお金を回することで、老後までお金を長続きさせる、あるいは物価が上昇するインフレで資金が枯渇してしまうリスクを軽減させることができます。
4.3 セミリタイアなら必要な資金を減らせる
セミリタイアは退職後もゆるく働き続けるスタイルでした。
当然ながらセミリタイア後にどれだけ働くかによってセミリタイアに必要な資産は変わってきます。
先にご紹介した通り4,000万円を投資で運用して月13万円の資産所得を得たとします。その場合、平均的な生活をするのに必要な収入は下表の通りです。
平均生活費 | 資産所得 | 必要な労働収入 | |
---|---|---|---|
単身世帯 | 16万円/月 | 13万円/月 | 3万円/月 |
二人以上世帯 | 28万円/月 | 13万円/月 | 15万円/月 |
総世帯 | 24万円/月 | 13万円/月 | 11万円/月 |
独身であればたった月3万円を稼げばよい計算です。この程度であればアルバイトなどで簡単に稼げる金額でしょう。
一方で、総世帯の平均である月24万円を達成するには月に約10万円を稼ぐ必要があります。月10万円となると少しハードルは高くなります。
4,000万円よりも少ない3,000万円の運用ではさらに必要な労働収入は増えてしまいます。
平均生活費 | 資産所得 | 必要な労働収入 | |
---|---|---|---|
単身世帯 | 16万円/月 | 10万円/月 | 6万円/月 |
二人以上世帯 | 28万円/月 | 10万円/月 | 18万円/月 |
総世帯 | 24万円/月 | 10万円/月 | 14万円/月 |
例えば、二人以上世帯では月18万円もの労働収入が必要です。これは新入社員の給与に匹敵するレベルです。
セミリタイア後もある程度稼げる手段を確保しているのならよいですが、そうでなければやはり4,000万円程度の資金は用意しておきたいところです。
5. セミリタイア資金を準備するためには?
「4,000万円」と言われてもかなりの大金ですよね。どうやってこれだけの資金を準備すればよいのでしょうか?
ここでも投資をうまく活用していくことが重要になります。
5.1 貯金だけでお金を貯めた場合
まずは貯金だけでセミリタイア資金を準備する場合にどれだけ大変なのか確認しておきましょう。
大卒23歳から働き始めたと仮定した場合、40歳までの期間は18年程度しかありません。
4,000万円を貯めるのに必要な毎月の貯金額は以下の通り高額になります。
40歳 | 45歳 | 50歳 | 55歳 | |
積立額 | 18.5万/月 | 14.5万/月 | 11.9万/月 | 10.1円/月 |
40歳までに4,000万円を貯めようとすれば、毎月18万円以上の貯蓄が必要になります。20万円の手取りなら2万円で生活することになりますから現実的ではありません。
もっと期間を伸ばして55歳までに貯める計算でも月10万円以上の貯蓄が必要です。貯蓄だけではかなり厳しいことをお分かりいただけると思います。
5.2 積立投資をしながら準備する場合
次に投資で資産運用しながらセミリタイア資金を準備する場合です。
投資と一口に言っても不動産投資を勧める方もいれば、FXを勧める方もいます。しかし、ここでは万人にお勧めできる株式投資を活用する前提で話を進めます。
というのも国は「NISA (少額投資非課税制度)」や「確定拠出年金」などの株式投資に係る優遇制度を準備しています。これらの制度も長期的に株式投資をする前提で作られた制度です。
つまり、株式投資こそ国のお墨付きの資産形成方法なのです。
5.2.1 おすすめの銘柄
長期で資産形成をするならインデックスファンドがおすすめです。
インデックスファンドは日経平均やニューヨークダウなどの指数へ連動する成果を目指す商品です。このようなインデックスファンドを例えば毎月数万円のような形で購入し続けるのです。
特におすすめの銘柄は全世界の株式を対象とする指数へ投資する商品です。なぜなら、どの国の株価が今後伸びるか長期に渡って当て続けることは難しいからです。
私の場合は「VT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)」という米国市場に上場する全世界の株式へ投資する銘柄を購入しています。
投資をこれから始める方であれば「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のような商品がおすすめです。
5.2.2 必要な投資額
株式投資のリターンは年率で4〜6%程度が期待できると言われています。
そこで先ほどご紹介したような商品を積立投資した場合を想定して、毎月必要な投資額を計算します。
40歳 | 45歳 | 50歳 | 55歳 | |
---|---|---|---|---|
4%/年 | 12.7万/月 | 8.9万/月 | 6.5万/月 | 4.9万/月 |
5%/年 | 11.5万/月 | 7.7万/月 | 5.5万/月 | 4.0万/月 |
6%/年 | 10.3万/月 | 6.8万/月 | 4.6万/月 | 3.2万/月 |
貯金だけの場合と比較して毎月必要な金額が大きく下がったことをお分かりいただけると思います。
確かに40歳でのセミリタイア達成には月10万円程度と多くの投資額が必要です。一方で、45歳まで投資期間を延ばせば7〜8万円まで下がります。
このように投資を活用することで貯蓄だけの場合と比較して資産増加を加速させることができます。
5.3 節約生活は必須
投資をしたとしても毎月月10万円近くを確保し続けなければ40歳でのセミリタイアを達成できません。
単身世帯の平均的な支出(16万円)に抑えたとしても、最低毎月25万円程度の手取り収入が必要です。
特に入社してすぐに手取り25万円を受け取れるのは一部の超優良企業に限られてしまいます。
したがって、セミリタイアを達成するためには節約生活は必須です。
6. セミリタイアの失敗を防ぐためには?
仮にセミリタイア資金である4,000万円を準備することができたとします。
そして、実際にセミリタイアを実行した場合、セミリタイア生活の失敗を防ぐためには何が必要なのでしょうか?
6.1 支出をできる限り抑える
セミリタイアが失敗する最大の原因が資金繰りがうまくいかなくなることです。
投資をしていると不況時に資産所得があまり得られない可能性があります。したがって、ギリギリの生活をしていると非常に危険です。
できるだけ支出を抑えた生活が必須です。例えば、生活費の大部分を占める家賃を抑えることが重要です。
セミリタイアすればフル勤務の必要はありませんから、駅から遠い物件で家賃を抑える、あるいは地方移住なども検討できます。
このようにできるだけ普段からの支出を抑えておくことが大事です。
6.2 税や社会保障制度の勉強
税金や社会保障、補助金などの制度についてしっかり勉強しておくことです。
収入が少ない場合は補助金を受けられる可能性がありますし、確定申告をすれば税金の還付を受けられるかもしれません。
残念ながらこう言ったものは原則自分から申請しなければ受け取ることができません。
社会の制度をしっかり理解して、無駄に払いすぎている税金などがないようにすべきです。
6.3 趣味や起業などへチャレンジする
資金管理以外に考えられるセミリタイアの失敗が、社会との関わりが薄れる点です。
セミリタイアは完全に仕事を辞めるわけではありませんが、それでも自由な時間は大きく増えます。
特に独身の方であれば人と一切喋られずに1日過ごすなんてこともありえます。自由な時間をうまく使いこなせずに退屈に感じたり不安に感じたりするのです。
趣味でどこかのコミュニティに所属したり、起業をすることで社会貢献するなど自分の生き方を探していく必要があります。
7. セミリタイアのデメリットも忘れずに
最後にセミリタイアするデメリットについてもご紹介します。当然ながらセミリタイアは良いことばかりではないからです。
セミリタイアのデメリットは、一旦セミリタイアしてしまうと同じ条件で再度働くことが困難な点です。
ある程度の能力を有していれば話は別ですが、基本的には40歳過ぎの人材をよい条件で迎え入れることはないでしょう。ましてや会社を辞めて何年かのブランクがある人間です。
そのため、セミリタイアを本当に実行するかどうかは慎重に判断する必要があります。
上述の通りセミリタイア資金はそんな簡単に貯まるものではなく、10年以上の年月をかけてゆっくり貯めていくものです。
その間にセミリタイアに対する自分の考えをゆっくり整理していけばよいのです。
たとえセミリタイアしないという決断に至ったとしても貯めた資金は残ります。老後資金にしてもよいし、何か別のことに使ってもよいのです。
また、投資や節約の知識はその後の人生にも大きく活かすことができます。
以上、ご参考になれば幸いです。