世界中の増配銘柄へ分散投資をしたいとお考えになったことはないでしょうか?
世界には何十年と増配し続けている企業があります。そんな増配企業の本場として真っ先に思いつくのは米国です。
しかし、保有銘柄が米国株ばかりになってしまうことを気にされている方もいるはずです。
そんな中、世界中の増配企業へ投資できる銘柄を見つけました。
それが、WDIV(SPDR S&P 全世界配当株式ETF)です。
本記事ではWDIVという世界中の増配企業へ投資する銘柄をご紹介します。
増配銘柄の魅力とは?
増配銘柄は安定感抜群
増配銘柄が人気を集める理由の一つは安定感抜群で安心して長期保有ができる点です。
連続増配銘柄であれば、よほどのことがない限り毎年のように増配します。そのため、長期で保有すれば受け取る配当金をどんどん増やすことができます。
また、増配銘柄は成長株などと比較して暴落耐性が強いことでも知られています。
株価の変動もマイルドになる傾向があるため、下落局面で強さを発揮します。
増配銘柄の本場は米国
増配銘柄といえば、真っ先に思いつくのが米国企業です。
25年以上連続で増配している企業を「配当貴族」、50年以上を「配当王」などと呼びます。
米国にはそんな長期にわたって増配し続ける企業があるのです。
投資銘柄で言えば、増配銘柄を集めたVIG(バンガード・米国増配株式ETF)が有名です。
この銘柄を購入するだけで、米国の10年以上連続増配企業へ幅広く投資することが可能です。
VIGはコロナショックのあった2020年3月は流石に減配でしたが、それ以降は18期連続で増配しています。
一方で、米国への一極集中に拒否感を示す方がいるのも事実です。
私もその一人で米国以外の企業にも投資をしたいと考えています。
最近はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)など全世界の株式へ投資する銘柄が人気を集めています。
世界分散投資は一つのテーマになっています。
WDIVとは?
全世界の増配銘柄への投資を実現してくれるのがWDIVです。
WDIVなら全世界の高配当かつ増配銘柄へ投資ができます。
米国の増配企業へ投資ができる銘柄はいくつかありますが、米国以外も含むWDIVは数少ない商品だと言えるでしょう。
WDIVはS&Pグローバル配当貴族指数へ連動する成果を目指す銘柄です。
本指数の特徴は以下の通りです。
- 少なくとも10年間にわたり連続増配
- 配当利回りが高い100銘柄
- 各国からの銘柄数は20が上限
- 各セクターからは35銘柄が上限
- 各銘柄の上限は3%、セクターは25%が上限
上記の特徴から言えることは以下の点です。
- セクター分散、地域分散された銘柄
- 増配だけでなく高配当な銘柄が投資対象
先にご紹介したVIGなどは連続増配にフォーカスしているため、配当利回りは2%以下と低い傾向にあります。
しかし、WDIVでは配当利回りの高い銘柄を選んでいるため、配当利回りが高いという特徴があります。
投資銘柄
投資銘柄の上位
WDIVの投資銘柄の上位を下表に示します。
順位 | 銘柄 | 構成比 |
---|---|---|
1 | SOLVAY SA | 2.43% |
2 | ALTRIA GROUP INC | 2.27% |
3 | HIGHWOODS PROPERTIES INC | 2.07% |
4 | VANGUARD INTERNATIONAL SEMI | 1.99% |
5 | HENDERSON LAND DEVELOPMENT | 1.61% |
6 | LTC PROPERTIES INC | 1.59% |
7 | VERIZON COMMUNICATIONS INC | 1.53% |
8 | KT+G CORP | 1.51% |
9 | KEYERA CORP | 1.50% |
10 | SINO LAND CO | 1.47% |
注: 2024年6月末時点の情報を基に作成
各銘柄の投資割合に上限が設けられていることもあり、1位のSOLVAY SAでも2.4%程度の投資割合でしかありません。
1位のSOLVAY SAはベルギーの化学メーカー、2位のALTRIA GROUP INCは米国のタバコ関連の企業、3位のHIGHWOODS PROPERTIES INCは米国の不動産関連の企業です。
各国の投資割合
国別の投資割合を下表に示します。
順位 | 国 | 比率 |
---|---|---|
1 | 米国 | 23.29% |
2 | カナダ | 20.38% |
3 | 日本 | 13.16% |
4 | スイス | 8.10% |
5 | 香港 | 7.82% |
6 | 英国 | 4.79% |
7 | 韓国 | 2.86% |
8 | イタリア | 2.80% |
9 | ベルギー | 2.46% |
10 | フランス | 2.35% |
注: 2024年6月末時点の情報を基に作成
米国の割合が20%程度と米国に投資割合が集中していないのが特徴です。
米国の次がカナダで20%程度、その次が日本で13%程度と、ここまでが10%以上の投資割合になります。
4位以下にはアジアやヨーロッパの国々が幅広くランクインしています。
セクター比率
次にセクター比率です。
順位 | セクター | 割合 |
---|---|---|
1 | 金融 | 26.54% |
2 | 公益事業 | 16.63% |
3 | 不動産 | 11.63% |
4 | 素材 | 8.32% |
5 | コミュニケーション・サービス | 7.88% |
6 | 生活必需品 | 6.89% |
7 | 資本財・サービス | 6.77% |
8 | エネルギー | 6.34% |
9 | ヘルスケア | 3.65% |
10 | 一般消費財・サービス | 3.33% |
11 | 情報技術 | 2.01% |
注: 2024年6月末時点の情報を基に作成
セクター比率は25%を上限にしていますが、2024年6月末時点では金融が25%を若干超えてしまっています。
金融以外では、公益事業が15%以上、不動産も10%以上と高い割合になっています。
配当金
配当金推移
WDIVの年間分配金の推移は下図の通りです。
増配銘柄が投資対象であるにも関わらず、この10年間の年間分配金はほぼ横ばいです。
次に四半期ごとの分配金推移です。
2013年の上場以来、2017年、2021年、2023年の3回減配しています。増配と減配を繰り返しているような状況です。
また、各月でも毎年増配というような傾向は見られません。
増配率
2014年から2023年の9年間で計算した増配率は以下の通りです。
1.22%/年
米国の増配銘柄を集めたVIGでは8%/年(2007年〜2023年)を超えていますから、WDIVの増配率は低いと言わざるを得ません。
配当利回り
2024年9月時点の株価は約66ドル/株程度です。この株価を基に計算した配当利回りは以下の通りです。
① 2023年の年間配当金を基準
2.858570ドル/株÷66ドル/株→約4.33%
② 直近4回(2023/12〜2024/9)の分配金を基準
2.914743ドル/株÷66ドル/株→約4.42%
WDIVの配当利回りは4%中ばとかなり高い水準にあります。配当利回りの上位銘柄が選ばれているだけのことはあります。
リターン
株価推移
WDIVの株価推移を下図に示します。
2013年の設定から株価の上昇はほぼ見られません。したがって、株価の値上り益は期待できないでしょう。
トータルリターン
WDIVのトータルリターンは以下の通りです。
1年:8.46%
3年:0.33%
5年:2.39%
10年:3.02%
注:2024年6月末が基準日の場合
株価はほぼ上昇していないため、分配金の受け取りによるリターンがほとんどです。
10年間のリターンは3%/年程度と高くありません。
その他
本銘柄の注意点の1つが経費率が高いことです。
総経費率:0.40%/年
人気ファンドでは0.1%/年を切る水準ですから、長期保有の際には気になるレベルです。
また、純資産総額は2024年11月時点で300億円程度と多くありません。人気ファンドでは何兆円レベルで運用されています。
このようにお金が集まっていないマイナーな銘柄である点には注意が必要でしょう。
WDIVに対する著者の考え
ここではWDIVに対する著者の考えをご紹介します。
WDIVは世界中の増配銘柄へ投資ができるため、投資対象としては魅力的だと言えます。
しかし、結論としてWDIVの購入は見送る方針です。
その理由を以下でご説明します。
増配率が高くない
1つ目の理由が増配率が高くないことです。
そもそも増配銘柄へ投資するのは安定的に配当金を受け取りたいからです。
しかし、WDIVは増配と減配を繰り返しており、VIGのような「何年連続で増配」という傾向は見られません。
そのため、WDIVへの投資では増配銘柄へ投資する目的を達成できません。
トータルリターンが低い
次にトータルリターンが3%/年程度とかなり低いことです。
全世界の株式へ連動するインデックスファンドやアメリカのS&P500指数に連動する銘柄であれば、過去の傾向からは7%/年以上のリターンが期待できます。
しかし、WDIVはたった3%/年です。さすがにリターンが低すぎます。
3%/年程度のリターンであれば債券でも実現できます。したがって、わざわざ価格変動の大きい株式へ投資する必要はないのです。
経費率の高さ
経費率が高く不人気銘柄であることもマイナスです。
増配銘柄は長期で配当を受け取り続けることが目的であるため、長期保有を前提にすべきです。
しかし、経費率は0.4%/年とかなり高く無視できないレベルです。
加えて、純資産総額も数百億円程度と多くありません。これでは将来的に上場廃止(償還)の可能性もあるでしょう。
増配のみを基準した銘柄を期待
WDIVは投資対象の選定の条件に高い配当利回りが含まれます。
個人的な希望としてはこの条件を撤廃し、VIGのように株価の上昇も期待できるような企業を集めてほしいと思います。
WDIVの配当利回りの高さは評価できますが、積極的に長期保有したい銘柄だとは言えません。
一方で、米国以外でそのような優良増配企業を探すのは難しいのかもしれません。
そうなるとやはり米国株の比率が高くなってしまいます。
全世界の増配株へ分散投資がしたいという私の夢は脆くも崩れ去りました。
以上、ご参考になれば幸いです。