投資をされている方が一度は悩むのが、全世界株か全米株のどちらへ投資すればよいかという点です。
世界経済の中心である米国に上場した銘柄の投資対象は多岐に渡ります。それらの銘柄の中でも個人投資家が手軽に、そして低コストで投資ができるのが米国ETF(上場投資信託)です。
米国ETFの中から最強の商品を1つだけ選べと言われれば、高校中退投資家TOSHIは全世界の株式へ投資するVT(バンガード・トータル・ワールドストックETF)という銘柄を推します。
本記事ではVTがなぜ最強の銘柄だと言えるのかその理由を解説していきます。
米国ETFとは?
そもそも米国ETFとは何なのでしょうか?
米国ETFは米国の証券取引所に上場しているETF(上場投資信託)のことを指します。
ETFは株価指数などに連動を目指して運用されている投資信託が上場したものです。投資信託とは違って指値注文などができ、個別株とほぼ同じように取引することができます。
世界経済の中心である米国の証券取引所(ニューヨーク)は世界最大の取引所です。そのアメリカで取引されている米国ETFには多種多様な銘柄があります。
その中でも最強のETFとして推したいのが全世界の株式へ投資するVT(バンガード・トータル・ワールドストックETF)です。
VTは世界最大級の資産運用会社であるバンガード社により運用される商品です。
バンガード社は低コスト(手数料が安い)の優良商品を提供することで有名で、投資をされている方なら一度は耳にしたことがある資産運用会社でしょう。
VTの基本情報
それではなぜVTが最強の米国ETFであると言えるのでしょうか?
以下ではVTの基本情報についてご紹介していきます。
投資銘柄数
VTの投資銘柄数は2023年3末月時点で9,500銘柄以上と他のETFを圧倒しています。
VTはインデックスファンドと呼ばれる株式指数に連動する成果を目指す商品です。連動する指数は「FTSE Global All Cap Index」で全世界の株式を対象とします。
投資対象は新興国を含む世界49カ国(地域)にも及びます。
先進国:25カ国
新興国:24カ国
投資対象は大型株だけでなく中小型株も含んでおり、世界の投資可能な市場の98%をカバーしています。
したがって、この指数に投資することは全世界の株式へ投資することを意味します。
投資国の割合
VTが投資する株式の投資対象国を割合順に並べると以下の通りになります。
順位 | 国 | 割合 |
---|---|---|
1 | 米国 | 59.10% |
2 | 日本 | 6.30% |
3 | イギリス | 4.00% |
4 | 中国 | 3.50% |
5 | カナダ | 2.90% |
6 | フランス | 2.80% |
7 | スイス | 2.40% |
8 | オーストラリア | 2.10% |
9 | ドイツ | 2.10% |
10 | 台湾 | 1.90% |
注:2023年3月末時点を基に作成。
全世界と言っても米国が約60%と大半を占めます。これは現在米国の企業が時価総額(株式数×株価)が大きい企業が多いためです。つまり、世界経済は米国の企業を中心に回っています。
2位の日本は6.3%、3位のイギリスが4%しかありませんから、米国以外の国の割合はかなり低くなっています。
純資産総額
VTは数兆円単位で運用されている銘柄です。
VTの純資産総額
米ドル:約2,640億ドル
日本円:約3.43兆円
注:2023年4月時点の純資産総額、1ドル130円で計算した場合
日本で販売されている人気上位の投資信託でも数千億円の純資産総額があればよいところです。一方で、VTは数兆円単位と桁が違います。
純資産総額が数億円などの銘柄の場合、運用が難しくなり上場廃止になる可能性があります。
しかし、VTは十分な運用額があるため、上場廃止になる可能性は低いと言えます。
経費率
当然ながら米国ETFを購入したらただで運用してもらえるわけではありません。経費率という形で一定の手数料を支払う必要があります。
VTはこの経費率が0.07%/年とかなり安い部類に入ります。
VTの経費率:0.07%/年
日本で販売されている投資信託も最近は手数料が安いものが出てきましたが、それでも0.1%/年程度はかかります。
VTはそれよりもさらに安い手数料で、例えば100万円分のVTを保有していたとしても支払う手数料はたった700円です。
たったこれだけで世界49カ国、9,500銘柄以上を間接的に保有することができます。
配当利回り
VTの配当利回りは2%を超えており、意外と配当金を受け取ることができます。
配当利回り:2.04%
注:2023年4月24日時点の株価と2022年の年間分配金で計算。
米国株へ投資するインデックスファンドでは配当利回りが1%台のことがほとんどです。
もちろん、配当利回り3%を超えるような高配当株ETFと比較すれば低いですが、VTからもそれなりの分配金を受け取ることができます。
VTとその他銘柄との比較
VTが最強の米国ETFだと言うと必ず反論があります。
それは例えばS&P500指数のような米国の株価指数へ連動するETFの方がよいという主張です。
以下ではバンガード社で人気のVOOというS&P500指数と連動するETFを例に挙げて、VTとの違いを比較していきます。
VOOとの比較
先にご紹介した基本情報をまとめた比較表を示します。
比較項目 | VT | VOO |
---|---|---|
投資国数 | 49カ国 | 1 (米国のみ) |
投資銘柄数 | 約9,500銘柄 | 500銘柄 |
純資産総額 | 約3兆円 | 約37兆円 |
経費率 | 0.07%/年 | 0.03%/年 |
配当利回り | 約2.04% | 約1.57% |
注:純資産総額は2023年4月時点で1ドル130円で計算した場合。配当利回りは2023年4月24日時点の株価と2022年の年間分配金で計算。
VOOは米国株への投資で投資対象が500銘柄しかありませんから、VTと比較して分散の面では劣っています。
しかし、経費率はVTよりさらに安い0.03%/年、純資産総額は約37兆円とVTのはるか上を行く運用額です。
実際のところVTよりもVOOのほうが資金を多く集めている人気ファンドなのです。
リターンの比較
投資は資産を増やすために行うものです。したがって、重要なのは投資のリターンです。
VTとVOOの株価推移を下図に示します。
出典:Yahoo finance
米国株のみに投資するVOOの株価上昇の方が大きいことが分かります。
また、配当込みのトータルリターンで比較すると以下の通りです。
VT | VOO | |
---|---|---|
1年 | -6.96% | -7.77% |
3年 | 15.96% | 18.56% |
5年 | 6.89% | 11.15% |
10年 | 8.26% | 12.20% |
注:2023年3月末時点の情報。バンガードHPを基に作成。
トータルリターンの場合もここ10年はVOOの方がよい結果が出ています。
米国株を対象とした米国ETFが人気の理由
過去のデータからリターンが高い
上述した通り、過去のデータからは米国株の方が高いリターンを記録しています。
特に2010年代はその傾向が強くありました。したがって、多くの方はなぜリターンの劣る全世界株へ投資する必要があるのかと疑問に思うのです。
VTの半分以上は米国株
VTの約60%は米国の企業へ投資しています。
米国株は世界的に活動をしている企業が多く、時価総額も上位を独占しています。
したがって、VTは全世界の株式へ投資すると言っても、実際のところほとんど米国株への投資になります。
現時点では米国株以外の株式が足を引っ張っており、リターンは米国株一本の方が高い結果になっています。
したがって、米国株だけでよいとの意見が多く聞かれます。
これからも米国株が強いはず!
米国は先進国の中でも人口増加が期待できる数少ない国です。
日本のように少子高齢化に悩んでおらず、米国ならこれからも経済が伸び続ける可能性が高いと考えている方が多いです。
加えて、米国企業の多くは世界的に事業を展開しています。ビザやマスターカードなどのクレジットカードは世界中で使えますし、マクドナルドやコカコーラなどの商品も世界中で購入できます。
これからも米国の企業は利益を上げ続ける可能性が高いと考えられるのです。
それでもVTを最強だと選ぶ理由!
それでも私はもし1つだけしか米国ETFを選べないのであれば、VTが最強の米国ETFであると考えます。
以下ではその理由をご紹介していきます。
将来は誰にも分からない
米国株の過去のリターンは確かに全世界株のリターンを大きく上回っています。
しかし、それらは過去のデータでしかありません。将来どうなるかなんて誰にも分からないのです。
もし本当に将来の株価が予測できるのであれば確実に儲けることができます。しかし、そんなうまい話はありません。
特に数十年先という長い期間で考えた場合に、米国株の方が全世界株よりもリターンが高いとは限りません。それなら、全世界に幅広く分散しておいた方がよいと考えるのです。
自動で銘柄を入れ替えてくれる
世界経済の中心は米国ですがそれがいつまで続くか分かりません。
中国やインドなどの国が数十年後に世界経済の中心になっているかもしれません。その結果として米国が衰退していく可能性だってあります。
しかし、VTなら仮に米国株の影響力が下がってきたら自動で銘柄の入れ替えをしてくれます。
VOOのように米国株一辺倒の銘柄を保有している場合は、自分でVOOを売って別の銘柄へ投資する必要が出てきます。このような銘柄の乗り換えはタイミングを間違えば大きくリターンを下げてしまいます。
投資に時間をかける必要がない
VTへの投資なら投資にかける時間を最低限にすることができます。
なぜなら、VTは9,000銘柄以上の株式へ分散投資ができるからです。このVTへの投資と現金を保有だけでも十分くらいの商品です。
投資についてあれこれ考えたくない方や初心者の方が1銘柄選ぶのであれば、VTのような銘柄がお勧めです。
配当利回りが意外とある
VTの配当利回りは2%以上と意外と高い点でもVTを推す理由の1つです。
配当を受け取るたびに税金を払う必要があるため、資産形成上は配当をなるべく出さない銘柄の方がよいと言われます。
一方で、配当を受け取るメリットもあります。
その1つが投資へのモチベーションの維持です。
不労所得である配当を受け取ることは会社以外の給料を得ることでもあります。それなりのペースで増えていくことは投資を継続する力になります。
また、配当利回りが高ければ、配当金生活の実現も選択肢に入ってきます。
実際に購入して後悔していない
実は私はVTを約2,000万円保有していますが、VTを購入したことに全く後悔していません。
VT以外にも米国高配当株ETFやS&P500指数に連動する投資信託などを保有しています。
しかし、「米国株に偏りすぎており大丈夫かな?」という不安を常に抱えており、日本株への投資を検討したりしています。
しかし、VTにはそのような気持ちは全く発生しません。購入後は自信を持って放置しています。
VTのおすすめの購入方法
では実際にVTを購入するとしたらどのように購入すればよいのでしょうか?
おすすめはSBI証券と住信SBIネット銀行を活用することです。
住信SBIネット銀行の外貨積立を利用すれば低コストで米ドルを準備できます。そして調達した米ドルを定期的にSBI証券へ移動する設定ができます。
さらに米国ETFの定期積立サービスを設定すればVTの購入をほぼ自動化できます。
VT購入の自動化手順
①米ドル準備:住信SBIネット銀行で米ドルを「外貨積立」する
②米ドルの移動:「米ドル自動定期入金サービス」で米ドルをSBI証券へ移動
③VTの購入:「米国株式・ETF定期買付サービス」でVTを購入
まとめ
本記事ではVTが世界最強の米国ETFである理由について解説しました。
VTは全世界の株式を9,000銘柄以上も保有できる優れたETFです。
もちろんS&P500指数のような米国株のみを投資対象にするETFを推す声があるのも分かります。しかし、将来の株価を予想することはプロでも難しいです。
そうであればVTを購入して全世界の株式を広く保有しておくのがよいでしょう。また、SBI証券と住信SBIネット銀行を活用すれば購入を半自動化することができます。
以上、ご参考になれば幸いです。