インデックス投資だけで配当金生活はできるのでしょうか?
投資を始めると配当金だけで生活する「配当金生活」に憧れを持つ方も少なくないでしょう。
しかし、配当金をたくさん得るために行う「高配当株投資」は「インデックス投資」と違って企業分析などが必要で手間がかかるものです。
インデックス投資で根強い人気を誇る銘柄の1つにVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケット)があります。
本記事ではこのVTIへの投資(インデックス投資)だけで配当金生活を実現することができるのか解説していきます。
VTIはインデックスファンドとして優れた銘柄!
VTIの基本情報
VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケット)を一言で言えば、「米国全体へ投資ができるインデックスファンド」です。
投資対象は米国の約4,000銘柄の大型株から小型株までを含みます。米国株式市場で投資できる銘柄のほぼ100%をカバーしています。
つまり、米国株へ投資したいのならこの銘柄を1つ保有していればよいのです。
VTIはバンガード社という世界最大級の資産運用会社の商品です。このバンガード社は低コストの商品を提供することで有名で、VTIの経費率はなんと0.03%と驚異的な安さです。
100万円のVTIを保有していたとしても手数料は年間300円です。たった300円を支払うだけで米国の約4,000銘柄を保有できるのですから人気が出る理由が分かります。
VTIのリターン
それではVTIのリターンはどの程度あるのでしょうか?
2023年1月時点で、10年リターンは約12%/年と驚異的なリターンを記録しています。
各年のリターンで整理すると下表の通り年間で20%〜30%上昇した年もザラにあります。
VTIの年間リターン
年 | リターン |
---|---|
2016 | 12.68% |
2017 | 21.16% |
2018 | −5.13% |
2019 | 30.80% |
2020 | 20.95% |
2021 | 25.72% |
2022 | -19.50% |
出典:バンガードHPの情報をもとに作成
VTIの配当利回り
上述の通り、VTIは過去のデータからリターンが高く魅力的なインデックスファンドであることが分かります。
一方で、配当利回りは決して高くありません。配当利回りは1.53%程度しかないのです。
VTIの株価:207.45ドル/株
2022年の分配金:3.1833ドル/株
配当利回り:1.53%
注:2023年2月13日時点の株価と2022年の年間配当金から計算
米国の高配当株ETFであるVYM、HDV、SPYDは3%を超える配当利回りが期待できますから、VTIの利回りは物足りないと言わざるを得ません。
VTIは増配がすごい
VTIは配当利回りが低いものの、実は増配が期待できます。
以下にVTIの年間分配金の推移を示します。右肩上がりで分配金が増えていることをお分かりいただけると思います。
2008年から2022年の14年間の間に分配金は2.5倍以上、年率にすれば6.8%程度の増配を記録しています。
つまり、追加投資をしなくてもどんどん分配金を増やすことができるのです。
VTIへの投資だけで配当金生活はかなり厳しい
これまでVTIの基本情報をご紹介してきましたが、結論としてVTIだけで配当金生活を達成するのは厳しいと考えられます。
理由は単純に利回りが低すぎるからです。
例えば、配当金生活のために月20万円、年間240万円の配当金が必要だと仮定しましょう。
VTIへの投資だけでこの配当金を受け取るために必要な資金は以下の通りです。
必要な株数:5,800株
必要な資金(ドル):207.45ドル/株 × 5,800株 = 1,203,210ドル
必要な資金(円):1,203,210ドル x 130円/ドル = 156,417,300円
注:為替は1ドル=130円で計算。
配当金生活を送るためには約1.6億円と莫大な資金が必要であることが分かります。しかも、配当金にかかる税金は抜きで考えた場合です。
1.6億円もの資金があれば、毎年240万円使っても投資なしで66年間も生活ができます。
これだけの資金があれば、リスクを取って配当金生活を目指す必要はないでしょう。
増配を加味しても時間がかかる!
一方でVTIにはそれなりに増配があることもご紹介しました。
例えば、5,000万円の投資資金が確保できるなら、全額VTIへ投資して放置すればいずれ配当金生活ができるようになるかもしれません。
しかし、これも相当な時間がかかってしまいます。
5,000万円でVTIを購入すると1年目は約77万円ほど配当金を受け取ることができます。
その後過去と同じ増配率が続くと仮定すると、配当金が240万円成長するには18年間もの年月が必要になります。
5,000万円という投資資金を準備するのだって相当な年月が必要です。さらにその後18年も経たなかれば配当金生活をすることはできません。
もちろん、その間に分配金の再投資もするでしょうが、それでもそれなりの年月がかかることに変わりはありません。
積立投資で目指す場合は相当な投資額が必要!
一般的な収入レベルの方は毎月の給料からコツコツVTIへ積立投資をすることになるでしょう。この場合はどの程度の年月が必要なのでしょうか?
VTIのトータルリターンは年率12%と驚異的であることをご紹介しました。しかし、今後もこのような高いリターンが続くとは考えにくいでしょう。
そこでリターンを5%、7%、10%、12%の4パターンで考えた場合の毎月の積立額を下表にまとめます。
20年 | 25年 | 30年 | |
---|---|---|---|
5%/年 | 389,263円/月 | 268,678円/月 | 192,248円/月 |
7%/年 | 307,145円/月 | 197,514円/月 | 131,151円/月 |
10%/年 | 210,702円/月 | 120,588円/月 | 70,782円/月 |
12%/年 | 161,738円/月 | 85,159円/月 | 45,781円/月 |
30年間積立投資をした場合でも、一般的な株式のリターンと言われる5%では毎月約20万円の投資を続けなければ、配当金240万円分のVTIを保有できません。かなり楽観的な7%のリターンでも毎月13万円と高額です。
リタイアまでの期間を25年、20年と短くすればするほど必要な積立額は増えていきます。一般的な収入の方にとって現実的な投資額ではありません。
したがって、利回りが1%程度のインデックスファンドで配当金生活を目指すには、一般的な財力では到底到達できないのです。
インデックス投資だけでは、配当金生活の実現は難しいと考えたほうがよさそうです。
まとめ
本記事ではVTIへの投資だけで配当金生活ができるかどうかというテーマで解説しました。
VTIは米国株全体へ投資ができる優れた商品であることに違いはありません。ここ10年のリターンは良すぎた部分もありますが、それでも世界経済の中心である米国は今後も投資対象の1つとしての地位は揺るがないでしょう。
一方で、VTIへの投資だけで配当金生活を実現するには莫大な資金が必要です。高配当株を混ぜない限り、一般的な収入の方が配当金生活を実現するのは無理だと考えたほうがよさそうです。
以上、ご参考になれば幸いです。