セミリタイア生活に突入すると重くのしかかるのが国民年金の支払いです。
国民年金は所得が少なくても毎月決められた金額を払い続ける必要がありますので、セミリタイア生活の大きな負担になります。
そこで本記事ではセミリタイアした後に国民年金とどのように付き合っていけばよいのか解説していきます。
国民年金はあくまで「保険」です。セミリタイアしたとしても可能な限り払い続けた方がよいでしょう。
セミリタイアすると年金はどうなる?
セミリタイアしても国民年金への加入が必要
セミリタイアすると年金はどうなるのでしょうか?
日本の公的年金制度は2階建ての構造になっています。
1階部分の国民年金は20歳以上60歳未満の全ての人が加入することになっています。一方で、2階部分の厚生年金は会社員の方などが加入します。
会社員の方は給料明細を見れば、毎月かなりの額が厚生年金として天引きされているのが分かるはずです。
厚生年金から国民年金への移行
上述の通り、会社員であれば厚生年金に加入されているはずです。
これが会社を辞めてセミリタイアすると厚生年金から外れます。そして、国民年金に加入しなければいけません。
こうなると、会社員時代とは違って自分で国民年金の保険料を納める必要があります。
国民年金の令和5年度の保険料は以下の通りです。
16,520円/月
つまり、毎月2万円弱を保険料として60歳まで払い続けることになります。収入がほとんどなくなるセミリタイア民としては痛い出費です。
年金はどの程度もらえるのか?
では逆に年金を受け取る側になった時、どの程度もらうことができるのでしょうか?
1階部分の国民年金を20歳から60歳まで40年間納めた場合の年金額は以下の通りです。
795,000円/年(令和5年4月分から)
月換算すれば6.6万円ほどです。もしあなたが自営業などで厚生年金に加入したことがなければ、満額納めてもたった6.6万円/月しかもらえないのです。
当然ながら別途自分で老後資金を準備しておかなければいけません。
厚生年金に加入している場合は?
一方で、厚生年金に加入されている方はもう少し多くの年金を受け取ることができます。
厚生年金は給与に応じて支払う保険料が変わります。多く保険料を払った方は多くもらえるし、給料が少なくあまり保険料を納めていない方は少ない年金しかもらえません。
なお、厚生年金は2階建て部分ですから、国民年金よりも高い保険料を納める必要があります(ただし、会社と折半で払います)。その分追加で年金額が増えるイメージです。
厚生労働省の調査によれば、令和3年の厚生年金の平均支給額は以下の通りです。
145,665円/月
これはあくまで平均支給額です。給料が高かった方もいれば少なかった方も含まれています。
セミリタイアする年齢にもよりますが、早期リタイアする方は厚生年金を納めている期間が短いため、当然ながらこの金額よりも低い額しかもらえないでしょう。
今後年金はどうなる?
そして毎回のように話題になるのが、今後年金はどうなるのかという問題です。
少子高齢化によって保険料を納める人が減って、逆に年金を受け取る人が増えている状況です。保険料の値上げや受給開始年齢の引き上げ(現在は65歳)などが盛んに議論されています。
したがって、将来年金がもらえなくなるのではないかと心配している人も多いでしょう。
しかし、国が運用する公的年金である以上、国が潰れない限り年金を受け取ることができるでしょう。ただし、制度を維持するために将来的な受給年齢の引き上げなどの改悪は想定されます。
国民年金保険料の免除制度
毎月2万円弱の保険料の支払いは、所得が少ないセミリタイア民にとって大きな出費です。
上述の通り、将来的に受給額の減少や受給開始年齢の引き上げなどが考えられます。
こうした状況を考えれば、セミリタイアを目指す多くの方は国民年金の「免除制度」に関心を持っているのではないでしょうか?
免除制度の概要
国民年金保険料の納付が困難な場合は支払いを免除できる制度があります。
セミリタイアした方であれば経済的な理由で保険料の納付ができない状態に該当する可能性があります。この場合は申請免除を行い、認められれば保険料の支払いが免除されます。
下表に免除される額と年金額への反映割合をまとめた表を示します。
免除される額 | 老齢基礎年金の年金額への反映割合 | |
---|---|---|
平成21年3月まで | 平成21年4月以降 | |
全額免除 | 1/3 | 1/2 |
3/4免除 | 1/2 | 5/8 |
半額免除 | 2/3 | 3/4 |
1/4免除 | 5/6 | 7/8 |
出典:日本年金機構のHPより作成
ポイントは保険料を免除した場合でも、その期間の年金額が0円にならない点です。
例えば、全額免除した場合でもその期間分も年金支給額の計算に組み込まれ、1/2は年金として受け取れるのです。
免除申請した場合の事例
ここでは免除申請した場合の事例をご紹介します。
例えば、現在セミリタイアを目指していて、今後会社を40歳で退職してそこから20年間保険料を全額免除した場合を仮定します。なお、未納期間はなしとします。
この場合、国民年金保険として受け取ることができる金額は以下の通りです。
596,250円/年(令和5年4月分からの場合)
全て納めていれば6.6万円/月もらえるはずだった年金が、約5万円程度まで支給額が落ちてしまいます。
もちろんここに厚生年金で納めた分が上乗せされます。しかし、セミリタイアする方は厚生年金の加入期間が短いので大きな増額は期待できないでしょう。
保険料免除の承認基準
ただし、保険料の支払いが厳しいという理由だけで無条件に支払いが免除されるわけではありません。
基本的には所得が一定以下という条件があります。
例えば、「全額免除」ができる場合は以下のようにほぼ所得がないことが条件です。
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円出典:日本年金機構HP
国民健康保険の免除によるメリットとデメリット
このように経済的に支払いが難しければ免除も1つの手段になり得ます。
しかし、当然ながら免除申請にはメリットとデメリットがあります。
免除するメリット
国民年金保険料を免除するメリットはなんでしょうか?
それはずばり現在の資金繰りが楽になる点です。
当然所得が少ないセミリタイア民にとって毎月の2万弱の出費は大きいものです。この部分をカットできるのなら、日々の生活はかなり楽になります。
また、免除を適用してもその期間の年金額が0円にならないこともメリットです。将来もらえる年金は減るものの、一定額は受け取ることができるのです。
したがって、あまりよい表現ではありませんが、免除できるならした方がお得とも言えるのです。
免除するデメリット
逆に免除するデメリットは将来もらえる年金が減ることです。
セミリタイアを実行される方はある程度の資産をお持ちだと思います。しかし、セミリタイアした後に必ずしも資金管理がうまくいくとは限りません。
早期退職したものの老後になったら資産はほぼなくなり年金に頼るしかない状況になったらどうでしょうか。もらえる年金額が少なければ生活に困ってしまいます。
もちろんお金がなければ働くと言う選択肢もあります。しかし、老人であれば雇ってもらえる仕事はあまりないでしょう。
若いうちならなんとかなりますが、年齢を重ねてからお金に困ると大変なのです。
iDeCoができなくなる
もう1つ見逃せないのがiDeCo(個人型確定拠出年金)への積立ができなくなる点です。
セミリタイアを目指している方の中にはiDeCoを利用されている方もいるかもしれません。
しかし、国民年金保険料が免除されるとiDeCoでの積立ができなくなってしまいます。これは、iDeCoを利用されている方にとって大きなデメリットです。
セミリタイアしても払い続けるべき理由!
「将来の年金は若干減るかもしれないが、全額もらえなくなるわけじゃないから免除した方がよいかも」と考える方がいるかもしれません。
しかし、私はセミリタイアしても国民年金保険料は払い続けるべきだと考えます。
以下でその理由を説明していきます。
国民年金は元を取れる制度
実は国民年金は保険料として払った分をしっかり回収できる制度です。
令和5年の国民年金保険料は16,520円/月でした。年によって保険料は若干変わりますが、この金額を保険料として固定すると、20歳から60歳までの40年間に納める保険料は以下の通りです。
16,520円/月✖️12ヶ月✖️40年=7,929,600円
総額で約800万円の保険料を納める必要があります。
一方で、令和5年4月からの支給額は以下の通りです。
795,000円/年
つまり、約10年年金を受け取れば、約800万円を回収したことになります。
厚労省による調査(令和3年簡易生命表)によれば、男性の平均余命は81.47歳、女性は87.57歳です。
現行の制度では65歳から年金がもらえますから、平均的には15年以上年金をもらうことができます。したがって、払った分以上の給付金をもらえる可能性が高いのです。
もちろん、インフレ等でお金の価値が変わることは考慮する必要がありますが、国民年金は世間が騒ぐほど悪い制度ではないのです。
国民年金はあくまで保険
「平均余命まで生きるかわからないから払いたくない」とか「保険料を免除して自分で運用した方が効率がよい」との考えももちろん理解できます。
しかし、理解しておくべきことは、国民年金はあくまで保険である点です。
セミリタイア生活では資産所得に依存して生活します。ですから、相場環境が悪ければ生活が破綻してしまうリスクは当然あります。
また、人生は想定外のことが起こるものです。資産運用が失敗したとしてもそれは自己責任でしかありません。
老後までに保有されている資産がなくなったらどうしますか?
少ない年金で老後を過ごせますか?
公的年金は国が運用するものですから国が潰れない限り残ります。
「自己責任でお金を増やす部分」と「国に頼る部分」の両方を持っていた方が生活が破綻するリスクを抑えることができます。
どっちかしか持っていないという極端な状況を作るのは、今後の生き方として正しい戦略だとは言えません。
大事なことはお金に不自由せずに墓場まで行くことなのです。
それでも免除される方は追納を知っておこう
「それでもどうしても免除したい」という方に1つご紹介したい制度があります。
それは国民年金には保険料の追納制度があることです。
これは保険料を免除したとしても、10年以内であれば後から保険料を納めることができる制度です。
もしセミリタイア生活を送ってみて、意外と資金繰りに余裕があることが分かったのであれば、追納を検討することをおすすめします。そうすれば、将来もらえる年金は減額されずに済みます。
特に若くしてセミリタイア生活に突入される方は途中で気が変わることが十分にあり得ます。国民年金に追納という制度があることを知っておいて損はないでしょう。
まとめ
本記事ではセミリタイア生活における国民年金と免除申請の考え方についてまとめました。
確かに国民年金保険料は所得の少ないセミリタイア民からすれば痛い出費です。しかし、保険料の免除を行うと当然ながら将来もらえる年金は減ってしまいます。
損得だけで考えるのではなく老後にいかにお金に困らない状況を作れるかが大切です。セミリタイア生活に突入してもできる限り保険料を納めた方がよいでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
現在iDeCoを活用されている方はセミリタイア後も活用し続けるのも選択肢の1つです。