こんにちは、TOSHI(@dropoutinvestor)です!
2024年に新NISAがスタートしたこともあり、投資をすることがスタンダードになりつつあります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)も掛け金が増額されており、老後資金を自分で確保する重要性が増しています。
そんな中悩ましいのが、セミリタイアする方がiDeCoをどう活用するのかという点です。
iDeCoは老後資金の確保に適した制度ですが、受け取り時に課税される可能性があります。
また、早くからお金を使っていくフェーズに突入するセミリタイア民にとっては微妙な制度だと言えます。
そこで本記事ではセミリタイアにおけるiDeCoの活用方法や受け取りについて著者の考え方をご紹介します。
iDeCoを少額積立するのはあり!
結論として、iDeCoを活用して若いうちから少額の積立を継続することはありです。
後述しますが、少額の積立であれば受け取り時にほとんど課税されることなく受け取れる可能性が高いからです。
また、最近は金融所得に対する増税の話が出ています。iDeCoでは投資信託の値上がり益に課税されません。
受け取り時に少しくらい課税されたとしても、税率が低ければお得になる可能性があります。
このようなことからiDeCoはお得に老後資金を準備できる制度だと言えます。
iDeCoの受け取り時の課税について
まずはiDeCoの受け取り時の課税について整理しておきましょう。
iDeCoでは①一時金、②年金形式、③一時金と年金形式の併用の3パターンでの受け取りが可能です。
①一時金
一時金として受け取る場合は会社から受け取る退職金と同じ扱いになります。
退職金の受け取りには以下に示す退職所得控除を活用することができます。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (A – 20年) |
出典:国税庁HPより
仮にiDeCoを30歳くらいで始めれば、60歳以降の受け取り時に30年~40年の期間があります。
この場合、上記の退職所得控除は1,500万円以上になります。この金額分のiDeCoを受け取っても課税されないのです。
②年金形式
年金形式で受け取る場合は国民年金や厚生年金の受け取りと同じ枠(公的年金等に係る雑所得)になります。
下表に示す通り、65歳未満の場合は60万円、65歳以上の場合は110万円までであれば所得はゼロになります。
年金を受け取る人の年齢 | 公的年金等に関わる雑所得が0円になる金額 |
---|---|
65歳未満 | 60万円以下 |
65歳以上 | 110万円以下 |
注:国税庁のHPを基に作成(2025年2月時点)。公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合。
③ 一時金と年金形式の併用
上記の①一時金と②年金形式の併用を選択することもできます。
一時金で一定額を受け取り、残りを年金形式で受け取る形です。
先にご紹介した2つの控除枠を使えることがメリットです。
その他重要なルール
セミリタイアを考えた場合、確定拠出年金にはその他にも重要なルールがあります。
それは一時金で受け取る場合のルールです。
以下のルールに抵触すると、会社からの退職金とiDeCoでの受け取りが退職所得控除の合算対象になってしまいます。
iDeCoの受け取りが後:前年以前19年以内に一時金で受け取った退職金
退職金の受け取りが後:前年以前4年以内に一時金で受け取った確定拠出年金
注:2025年2月時点
早期に会社を辞めるセミリタイアであれば、最初のルールが重要になります。
退職金を受け取ってから20年が経過していなければ合算対象になり、iDeCo受け取り時に使える退職所得控除は会社から受け取った退職金を差し引いた金額になってしまいます。
セミリタイアする方の特徴とは?
次にセミリタイアする方の特徴も整理しておきましょう。
セミリタイアする方は退職金をたくさんもらえる方ではありません。なぜなら、早い段階で会社を辞めてしまうからです。
また、セミリタイア後に会社に勤めていてもフルで働いていないケースが多く、給料は高くならない傾向にあります。
したがって、将来もらえる年金が少ないという特徴があります。
① 若くしてセミリタイアする方
早い段階で退職された方は先にご紹介した「前年から19年以内~」のルールに該当しません。
例えば、40歳でセミリタイアして退職金を受け取り、その後65歳でiDeCoを一時金で受け取ると25年が経過しているので合算対象になりません。
また、たとえこのルールに抵触したとしても大きな影響はないでしょう。
なぜなら、勤務年数が少ないので会社から受け取る退職金自体が少ないからです。
したがって、合算対象になっても退職所得控除が十分残っている可能性が高いのです。
② 60歳近くでセミリタイアする方
逆に50代などの60歳近くでリタイアする方は一時金での受け取りはほぼ確実に合算対象になります。
このような方々は会社での勤続年数が長いので、会社から受け取る退職金もそれなりになる可能性があります。
加えて、厚生年金への加入期間も長いので、将来もらえる年金もそこそこあります。
したがって、一時金でも年金形式でも無税で受け取るのはかなり厳しくなるでしょう。
セミリタイアにおけるiDeCoの受け取り戦略!
それでは私が考えるセミリタイアにおけるiDeCoの受け取り戦略についてご紹介していきます。
セミリタイアした方は「一時金」での受け取りを優先し、場合によって「一時金と年金形式の併用」を検討するのがよいでしょう。
以下ではいくつかの事例をもとに解説していきます。
① 1,500万円のiDeCoがある場合
iDeCoを30歳から開始して60歳に一時金として受け取るケースです。
また、40歳までに会社を退職しており、その後の退職金の受け取りはないと仮定します。
この場合、以下の通り1,500万円の退職所得控除があります。
退職所得控除枠:40万円 x 20年 + 70 万円 x 10年=1,500万円
合算対象に係る「前年から19年以内~」のルールにも抵触しないので、1,500万円の控除枠をフル活用できます。
結果として、iDeCoを一時金で全て受け取れば課税されることはありません。
② 2,000万円のiDeCoがある場合
次に2,000万円のiDeCoがあり、その他の条件は①と同じ場合です。
上述の通り退職所得控除は1,500万円ですから、500万円が退職所得控除を超過してしまいます。
そこでこの場合は一時金と年金形式の併用を検討します。
60歳で1,500万円を一時金で受け取り
残りは年金形式で100万円/年を5年間で受け取り
一時金は退職所得控除に合わせたので、所得はゼロとなり無税で受け取ることができます。
年金形式の方は65歳未満であれば60万円の控除枠があることをご紹介しました。
したがって、雑所得は40万円です。
100万円 − 60万円 = 40万円
しかし、所得税や住民税には40万円以上の基礎控除があります。
そのほかの収入がなければ基礎控除内に収まるので、やはり無税で受け取ることができます。
③ 2,000万円以上のiDeCoがある場合
仮に2,000万円以上のiDeCoがあるのであれば、年金形式での受け取り期間を調節するのがよいでしょう。
例えば、2,500万円のiDeCoがあるなら、1,500万円を一時金で受け取って、残りの1,000万円を15年の年金形式で受け取る形です。
この場合、1年間のiDeCoの受け取りは70万円弱になります。また、65歳からは年金が支給されますが、国民年金の支給額は年約82万円(令和6年)です。
厚生年金がほとんどない方であれば、年金とiDeCoの受け取りの合計が約150万円/年になります。
70万円(iDeCo) + 80万円(公的年金)= 150万円
65歳以降では公的年金に対する控除枠が110万円あります。
基礎控除を合わせれば150万円を超えるため、やはり無税でiDeCoを受け取れる可能性があります。
年金の繰り下げも選択肢に入る!
iDeCoで多額の資金があるのであれば、年金の繰り下げを活用することで公的年金の受け取り額を増やすこともできます。

早期にセミリタイアする方は年金支給額が少ないので、年金の繰り下げで長生きリスクへ備えることができます。
例えば、70歳まで5年間支給時期を遅らせて、その間にiDeCoを年金形式で受け取ってしまう戦略を取ることもできます。
こうすれば年金支給額を40%以上も増やすことができます。
退職所得控除枠があまり使えない方は?
一方で、退職所得控除枠を大きく使えない場合は少し検討が必要です。
定年近くまで勤めてセミリタイアした場合はiDeCoを一時金で受け取ると合算対象になるし、厚生年金の支給で公的年金の控除枠にも空きがありません。
そんな方は一時金での受け取りがおすすめです。
なぜなら、退職所得は課税対象が1/2されるからです。
(収入金額 - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額
例えば、1,000万円のiDeCoを受け取る際に300万円の控除枠しか残っていないケースを考えてみます。
この場合は以下の通り350万円が退職所得になります。
(1,000万円 ー 300万円) x 1/2 = 350万円
退職所得が350万円の場合の所得税を計算すると30万円弱になります。
一方で、長期でiDeCoを運用していれば投資からの利益が出ているはずです。
例えば、200万円の値上がり益が出ていたとすると、以下の通り約30万円の節税になります。
200万円 x 15.315% = 30.63万円
つまり、iDeCo受け取り時に支払う税金分を相殺できます。
一時金受け取りで税金を多少払っても、iDeCoを活用した方がお得になる可能性が高いのです。
iDeCoは少額の積立を長くするのがよい!
上記から言えることは少額の積立を長く続けるべきだということです。
そうすれば退職所得控除を大きくすることができ、受け取り時に有利になります。
また、長期の運用期間を確保できるのなら、iDeCoの運用益も大きくなるので、損をする確率が減ります。
iDeCoで高額な積立をする必要はありません。むしろ少額の積立にすべきです。
そうすればiDeCoの受け取りで損をする可能性は極めて低くなります。
以下では長期で少額の積立を行う事例を出して説明します。
25歳でiDeCoを開始、60歳までの35年間運用
25歳から60歳までの35年間で月2万円の積立を継続した場合を考えてみましょう。
年利5%と仮定すると2,000万円以上の老後資金を作ることができます。
投資元本:840万円
評価額:約2,226万円
35年の退職所得控除は1,850万円になりますので、その分を一時金で受け取ると残りは380万円程度です。
これを年金形式で10年間で受け取れば40万程度になりますので、基礎控除内に収まります。
しかも、値上がり益が1,400万円ほど出ていますので、本来こちらにかかる約20%の税金(300万円弱)を節税できます。
このように月数万円の積立であれば、課税される可能性は極めて低いのです。
したがって、最適解はiDeCoで1~2万円の少額積立を長期で行い、残りは2024年に拡充されたNISAを埋めていくことになるでしょう。
まとめ
本記事ではセミリタイアにおけるiDeCoの受け取り方法や活用戦略についてご紹介しました。
早期にセミリタイアするなら退職所得控除を大きく活用できる可能性があります。また、公的年金の支給も少ないためiDeCoを無税で受け取れる可能性が高いでしょう。
このように特に少額の運用であれば税金を気にする必要がありません。iDeCoは「長期」で「少額積立」がセミリタイアする方のキーワードになります。
セミリタイア生活は必ずしもうまくいくとは限りません。万が一の備えとしてiDeCoを活用して老後資金を確保しておくことが有効な手段だと言えるでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。