こんにちは、高校中退投資家Toshiです!
下記記事で、配当金生活を送る際に法人化(マイクロ法人)するメリットをご紹介しました。
法人化のメリットの1つに様々な費用を損金(経費)にできる点が挙げられます。
本記事ではセミリタイアして資産管理会社を設立した場合、どのような支出を経費として活用すべきなのか解説していきます。
本記事で想定するマイクロ法人
- 資産5,000万円前後でリタイアする人向け
- 資産の一部を法人へ移して運用(資産管理会社)
- 社会保険料の節約が目的
- 金融所得の課税強化への対策
資産管理会社で活用すべき経費とは?
資産管理会社を設立することで様々な支出を経費にすることができます。
個人で株式を保有する場合、売却益や配当金には通常20.315%の税金がかかります。しかし、法人で保有しておけば、法人の利益がなければ税金を払う必要がなくなります。ここに大きなメリットがあります。
新しく誕生した岸田政権では金融所得への増税が検討されているようです。そうなれば、ますます法人で資産運用するメリットが大きくなります。
以下では、配当金生活で法人化した場合を想定して、理解しておくべき支出や活用すべき支出を確認していきます。
資産管理会社を運営する上で経費として考えるべきもの!
税理士の費用
まず、法人を運営する上で発生してしまうのが税理士の費用です。
法人には会社法で決算において作成すべき書類が定められています。毎年決算時に貸借対照表や損益計算書、法人税申告書などの書類を作成して提出する必要があります。
もちろん、自分で全てできるのであれば問題ありません。しかし、法人の決算報告は非常に複雑であり、多くの方は税理士への依頼を想定しておく必要があります。
税理士費用はピンキリですが、20万円〜30万円/年程度を考えておいたほうがよいでしょう。
役員給与
役員に支払う給料、つまり自分自身への給与支払いを経費にすることができます。
ただし、事前に決めた給与額を支給し続けることが前提です。今月は30万円、来月は40万円など給与をコロコロ変えることはできないということです。
なお、給与所得には55万円の給与所得控除枠があります。この範囲であれば、給与所得の所得金額は0円、つまり所得税なしで全額給与を受け取ることが可能です。
給料を高く設定することも可能ですが、次にご紹介する社会保険料の負担額も上がってしまいます。年間55万円の給与支払いが1つの目安になるでしょう。
社会保険料
役員給与を支払う場合、社会保険(健康保険と厚生年金)へ加入する義務が生じます。
厚生年金や健康保険の保険料は「標準報酬月額」によって決定されますが、会社はその半分を支払う必要があります。
保険料は都道府県や年齢によって異なりますが、55万円の給与所得控除枠に収まる給与であっても、以下の通り年間約14万円の支払いが発生します。
会社が負担する社会保険料
- 健康保険:3,375.6円/月=40,507.2円/年
- 厚生年金:8,052円/月=96,624円/年
注:東京都の令和3年3月以降の保険料。健康保険は40歳以上64歳以下を想定。
役員社宅
法人名義でアパートやマンションを契約して、役員へ社宅を貸与する方法です。ただし、通常は家賃の50%程度を個人が負担しなければいけません。
例えば、家賃8万/月のアパートを法人名義で契約した場合を考えてみます。
法人側のお金のやり取り
支出:8万円/月の家賃の支払い
収入:4万円/月を役員から受け取り
→正味4万円が費用計上
8万円/月のうち役員から50%の家賃を受け取るので、実質的に残りの4万円/月が損金となります。
家賃は生活費の大部分を占めますので、役員社宅を活用することは大きなインパクトがあるでしょう。
なお、法人としての実績がないとアパートの名義変更が難しい場合もありますので注意が必要です。
少額原価償却資産
投資をするために使うパソコンや机、椅子などの支出を経費にできます。
特に取得価額が30万円未満のものであれば、購入した年に一括して経費として計上できます。通常は30万円以上の高額なパソコンや椅子を購入したりしないでしょうから、ほとんどのものが購入した年に一括して経費計上が可能でしょう。
この特例を使うには資本金や従業員数などの制限がありますが、一人社長の小さな法人ではそれらの基準を超えることはまずありえません。
出張手当/旅費交通費
株主総会や研修などに参加する際に発生する交通費や出張手当を損金にできます。
当然ながら交通費は実費分を経費にできます。加えて社内規定を定めておけば、出張に係る日当や宿泊費を「定額」で支払うことができます。これには大きなメリットがあります。
例えば、宿泊を伴う出張手当を15,000円/泊と会社で定めた場合を考えてみましょう。
役員である私は株主総会へ出席するために東京に行き、5,000円/泊のホテルに宿泊したとします。この場合でも、15,000円の日当を受け取ることができます。しかも、日当は非課税であるため、この15,000円には税金がかかりません。
- 出張での支出:5,000円
- 出張手当:15,000円
- 差額:10,000円⇒出張により手取りがアップ
もちろん、日当を5万円などの高額に設定することはできません。また、都合よく出張があるとも限りません。
しかし、法人と個人双方にメリットがありますので、是非活用したい制度です。
資産管理会社ではどの経費を活用できるのか?
上記でご紹介したもの以外にも、役員退職金、交際費、経営セーフティ共済など、法人で経費にできるものはたくさんあります。
しかし、これらを使いこなすためにはそれなりの利益があることが前提です。利益が少なければ赤字になってしまいますので、あれもこれも活用できないのです。
以下では、本記事で想定する資産数千万円を法人に移した場合のケースを例に、どの経費を活用できそうなのか解説していきます。
投資資金別の想定経費
税引前4%の配当利回りの商品へ投資した場合の収益は以下の通りです。
- 投資資金:2,000万円→収益:80万円
- 投資資金:2,500万円→収益:100万円
- 投資資金:3,000万円→収益:120万円
4%の配当利回りは高配当株ETFやREITなどを活用すれば十分狙えます。しかし、それでも2,000万円の投資資金で80万円、3,000万円でやっと120万円の利益です。
投資資金2,000万円の場合
この場合、税理士への費用に加えて、役員給与と会社負担分の社会保険料を支払うだけでほぼ80万円を使い切ります。
- 税理士費用:20万円
- 役員給与:45万円
- 社会保険料:約14万円
- 合計:79万円
上記想定では、55万円の給与所得控除枠をフル活用することができません。決算処理を自分でやるなど税理士費用を抑えることも検討する必要があるでしょう。
したがって、法人を設立するならこの2,000万円がギリギリのラインです。
投資資金2,500万円の場合
続いて投資資金が2,500万円の場合の想定経費を以下に示します。
- 税理士費用:20万円
- 役員給与:55万円
- 社会保険:約14万円
- 出張旅費:10万円
- 合計:99万円
この場合、役員給与を給与所得控除枠最大の55万円まで引き上げることが可能です。これに加えて、年数回どこかの株主総会やセミナーへ参加して経費にすることも可能でしょう。
しかし、役員社宅の制度を使うまでには至りません。たとえ、2,500万円の投資資金があっても、法人のメリットを使い尽くすことは難しいということです。
投資資金3,000万円の場合
最後に投資資金3,000万円で120万円の収益がある場合です。
ここまで来ると役員社宅の活用が検討できます。しかし、家賃5万円/月レベルの物件しか借りることができず、これ以上高い物件だと赤字になります。
- 税理士費用:20万円
- 役員給与:55万円
- 社会保険:約14万円
- 役員社宅:30万円(家賃5万円/月の50%)
- 合計:119万円
3,000万円という資産を法人に移したとしても、役員給与の支払いや役員社宅くらいしか活用できないのです。
マイクロ法人は社会保険料の節約に使うべき!
上記でご説明したとおり、法人の経費を使い倒すためには、相当な資産を法人へ移す必要があります。
当然ながら個人で投資をすることにもメリットはあります。例えば、NISAなどの非課税で投資できる制度もありますし、日本株の配当金に係る税金は配当控除を活用することで低く抑えることができます。
したがって、全ての資産を法人へ移すことは得策ではありません。そう考えると、資産5,000万円程度の方が法人を設立した場合、社会保険料の節約程度しか活用することができません。
そのため、最初から節税について深く考える必要はありません。増配や追加投資などで収益が大きくなった段階で、役員社宅などの節税手段の活用について勉強していけばよいのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
資産管理会社を保有することで様々な経費を法人の損金として扱うことができます。
一方で、資産数千万円を法人へ移して運用する方であれば、役員給与と社会保険料の支払いで投資の収益は底をつきます。経費の活用についてあれこれ考える必要はなさそうです。
法人を運営しながら増配などで一定以上の収益が上げるようになったら、役員社宅なども活用しながら上手に節税していくのがよいでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。