ちまたではフリーランス/自営業者は年金が少ないから不利だと言われています。
フリーランス/自営業者の方の中には、会社員は厚生年金でたくさん年金を貰えるから羨ましいと思っている方もいるかもしれません。
果たして本当にそうでしょうか?
高校中退投資家Toshiは、老後資金を準備する制度に関しては、逆にフリーランスのほうが柔軟性が高く有利だと考えています。
本記事ではフリーランスや自営業者が老後資金の準備のために活用できる制度をご紹介するとともに、その制度の活用の仕方について解説していきます。
フリーランスには多種多様な老後資金のための制度がある!
日本の経済状況や少子高齢化を考えれば、老後生活を心配するのは当然のことです。
令和3年度の国民年金(老齢基礎年金)はたった65,075円/月です。厚生年金に加入していないフリーランス/自営業者の基本となる年金額です。
しかし、フリーランス/自営業者の方には、この国民年金にプラスして老後資金を準備するための様々な制度が用意されています。
老後資金のために活用できる制度(一例)
- 付加年金
- 年金の繰下げ
- 国民年金基金
- 小規模企業共済
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
赤字で示したものは一般的な会社員の方は使えない制度です。また、iDeCoは会社員も活用できるものの、フリーランスの方が大きく拠出できるという特徴を持っています。
会社員は給料から天引きされて厚生年金保険料が徴収されます。しかし、フリーランス/自営業者なら、ご自身の置かれている状況から最適な制度を選択することができるのです。
以下では、各制度の概要を確認していきましょう。
各種制度の概要
付加年金
付加年金は将来もらえる国民年金を増やすことができる制度です。
毎月の国民年金保険料に400円を追加で納めることで、納めた月数分×200円を増額させることができます。
- 付加保険料:400円/月
- 毎月納める国民年金保険料:16,610円/月+400円=17,010円(令和3年度の場合)
- 付加年金額(年):200円×保険料を納めた月数
本制度の特徴は月々の支払い額がたった400円だということです。増額分は少ないですが、今回ご紹介する制度の中で最も手軽に活用することができます。
インフレは考慮されませんが、たった2年間年金を受け取るだけでもとが取れるお得な制度だと言えます。
年金の繰下げ受給
年金の繰下げ受給は年金の受給開始時期を遅らせる制度です。その分将来受け取る年金を増額させることができます。
繰下げ受給による年金の増額:繰り下げた月数×0.7%
例えば、65歳から66歳へと1年間年金の受給開始を遅らせると、8.4%(12ヶ月×0.7%)年金額を増額させることができます。
年金の繰下げ受給の魅力は、増額された年金額が一生涯続くことです。
「健康のために体が動くまでは仕事を続けたい」とお考えの方なら、必ずしも65歳から年金を受給する必要はないでしょう。
そんな方は年金の繰下げ受給を活用することで、長生きリスクに備えることが可能です。
国民年金基金
国民年金基金も将来もらえる年金額を増やすことができる制度です。会社員が加入する厚生年金と同じような立ち位置です。
掛け金は年齢や性別などによって変わります。例えば、平均寿命の長い女性は男性よりも掛け金が高くなります。また、加入は口数であるため、将来年金をたくさん受け取りたい方は掛け金を増やすこともできます。
必ず加入が必要な1口目の掛け金と年金の加算額は下記のとおりです。
■男性30歳加入の場合
掛け金月額:9,250円→月額2万円加算
■女性30歳加入の場合
掛け金月額:11,510円→月額2万円加算
約1万円を支払い続けることで、月額2万円年金額を増やすことが可能です。
なお、こちらは一度加入すると任意脱退できない、そして付加年金との併用不可である点には注意が必要です。
また、後述するiDeCoと合算して月額68,000円までしか拠出できないという制限もあります。
小規模企業共済
小規模企業共済は個人事業主などのための退職金制度です。
掛け金は月額1,000円~70,000円で、500円単位で自由に設定が可能です。
小規模企業共済は基本的には退職金を自分で積み立てるイメージです。運用収益はほぼ見込んでいません。加えて、掛け金の納付月数が20年未満の場合は掛け金合計額を下回ることに注意が必要です。
ただし、掛け金は全額が所得控除の対象になりますので、毎年納める所得税を安くすることができます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは個人型確定拠出年金のことを言います。自分年金のようなもので、加入者である自分自身が投資商品を選定して運用することができます。
運用結果によって自分が受け取る年金が増減する点が、今までご紹介してきた制度と大きく異なります。
掛け金は全額が所得控除の対象で運用益(20.315%)も非課税です。長期間運用すればそれなりの運用益に達するはずです。運用益が非課税というのはかなり魅力的です。
なお、自営業者やフリーランスはiDeCoに月額68,000円まで拠出することができます。厚生年金に加入している会社員は数万円までしか拠出することができませんから非常に有利です。
可能性は無限大?老後資金準備のための制度活用戦略!
上述の通り、フリーランスや自営業者には老後資金を準備するための様々な制度があります。
では、どの制度を活用して老後資金の準備を進めればよいのでしょうか?
高校中退投資家Toshiのおすすめの活用方針を以下に示します。
フリーランスの老後資金準備の方針
- できるだけiDeCoを活用する
- 念のため付加年金にも加入
- 年金の繰下げ受給を活用して長生きリスクに備える
方針としてはできるだけiDeCoへ拠出することを考えます。そして、補助的に付加年金を活用します。また、年金の繰下げ受給を検討して長生きリスクに備えます。
できるだけiDeCoを活用する
まず活用を検討すべきなのはiDeCo(個人型確定拠出年金)だと考えます。
特に長期の運用期間を確保できる若い世代には非常に魅力のある制度です。運用益が非課税になりますので、他の制度と比較して大きな資産を作ることができます。
確かに投資をしなければいけないというハードルはありますが、投資すべき商品はほぼ決まっています(全世界や全米を投資対象にする投資信託)。
以下は年率4〜6%で30年間運用したシミュレーション結果です。なお、年率4〜6%は株式100%の投資信託なら十分狙えるリターンです。
月額拠出額 | 運用資産額 | ||
---|---|---|---|
4%/年 | 5%/年 | 6%/年 | |
1万円 | 6,940,495円 | 8,322,587円 | 10,045,151円 |
2万円 | 13,880,989円 | 16,645,173円 | 20,090,301円 |
3万円 | 20,821,483円 | 24,967,760円 | 30,135,452円 |
4万円 | 27,761,977円 | 33,290,346円 | 40,180,602円 |
5万円 | 34,702,471円 | 41,612,932円 | 50,225,753円 |
6万円 |
41,642,965円
|
49,935,519円 | 60,270,903円 |
注:運用時の手数料や受け取り時の税金を無視した運用資産額
たった月2〜3万円を投資し続けるだけで、2,000万円程度の老後資金を作ることができます。
会社員が加入する厚生年金保険料は、標準報酬月額が30万円の場合約5.5万円です(会社負担分も含む)。厚生年金保険料と比較すれば、月2〜3万円の拠出額はそこまで高い金額ではありません。
念のため付加年金にも加入
iDeCoのデメリットは運用がうまくいく保証がない点です。そのため、想定通りに運用ができない事態も考えておかなければいけません。そこで、少額から始められる付加年金にも加入しておきます。
月額の掛け金はたった400円ですから、今回ご紹介した制度の中で最も活用しやすい制度です。加えて、年金を2年間受け取るだけでもとが取れます。
30年間付加年金に加入した場合、年金額を月額6,000円増やせます。
200円×12ヶ月×30年=72,000円/年(6,000円/月)
月6,000円あれば水道光熱費や通信費が払えます。老後貧乏を防ぐためには決して侮れない金額です。
年金の繰下げ受給を活用して長生きリスクに備える
人は何歳まで生きるか分かりません。そうなると強いのはやはり一生涯もらえる終身年金、つまり国民年金です。
上述したとおり、iDeCoを活用すれば月数万円の投資でもある程度の資産を作ることができます。また、60歳以降も仕事をほそぼそと続けたいとお考えの方もいるかもしれません。そんな時に威力を発揮するのが年金の繰下げです。
たとえば、70歳まではiDeCoで貯めた資金やパートの収入で生活することができるなら、5年間年金の受給を繰下げることができます。その場合、70歳からもらえる年金は月10万円を超えます。
■繰下げしない場合の年金額
- 国民年金:65,075円/月(令和三年度の場合)
- 付加年金:6,000円/月(30年加入の場合)
- 通常の年金額:65,075円+6,000円=71,075円/月
■5年間繰下げした場合の年金額
- 繰下げによる増額:5年×12ヶ月×0.7%=42%
- 繰下げ後の年金額:71,075円/月×142%=100,927円/月
つまり、月3万円も受け取る年金を増やすことができます。もちろん、月10万円だけでは生活はかなり厳しいので、足りない部分はIDeCoや貯金で補う必要があります。それでも7万円の年金で生活する場合と比べてだいぶ楽になるはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自営業者やフリーランスにも様々な老後資金の準備方法があることをご理解いただけたと思います。
実際のところ会社員は厚生年金保険料としてかなりのお金を毎月収めています。それと比較すれば、自営業/フリーランスが月数万円をiDeCoで運用するほうが効率的に老後資金の準備をすることができるでしょう。
問題は多くの方が準備をせずに老後を迎えてしまうことです。フリーランスや自営業の方は今回ご紹介した制度をしっかり理解して、うまく使いこなしていく必要があります。
以上、ご参考になれば幸いです。