VT(バンガード・トータル・ワールドストックETF)のような全世界株式への投資で配当金生活は目指せるのでしょうか?
全世界の株式へ分散投資することは、多くの方にとって最適解の1つになるでしょう。
その代表例が世界約9,800企業(2024年2月末時点)へ投資ができるVTという米国ETFです。
一方で、投資に慣れてくると全世界株式への投資だけでは飽きてしまい、別の投資対象も検討してみたいとか、配当金生活を目指してみたいと感じるものです。
そこで本記事ではVTへの投資を中心に据えて配当金生活を目指す投資スタイルについて解説していきます。
VT(全世界株式)は投資対象としてどうなのか?
VTのような全世界株式を投資対象にする銘柄を購入しているなら商品選びに成功したと言えるでしょう。
個人投資家の間でよく話題になるのが、「米国株」へ投資するか、それとも「全世界株」へ投資するかという議論です。
世界経済の中心である米国への投資か、全世界の株式へ分散投資すべきかというものです。
投資期間は人それぞれですし、リスク許容度も人によって変わります。したがって、どちらが正解になるかは分かりません。
しかし、米国の調子がこのまま続くとは限りませんので、全世界株式へ分散投資をして世界経済の成長に乗ろうという選択は最適解の1つになるはずです。
VTは株価が上昇している
そんな全世界の株式へ投資ができるVTの株価推移を下図に示します。
出典:Yahoo finance
2009年から2023年の15年の株価上昇で考えると、年率8%弱のリターンがありました。
これは15年で3倍近くの株価になった計算です。しかも、VTは四半期ごとに分配金を出しますので、配当を再投資したトータルリターンではさらに高くなります。
株式のリターンは年率5%前後と言われていますから、この数十年ほどは全世界株でも大きなリターンがあったと言えるでしょう。
このような広く分散された銘柄へ愚直に投資し続ければ十分成功と言えるのです。
配当金生活に憧れるのは自然な流れ
しかし、長い期間投資をしていれば、投資に対する考えが変わるのも普通です。
当初の目的が老後資金の確保だったとしても、途中から配当金生活を目指すようになることは十分ありえます。
なぜなら、配当金は会社以外から受け取るお金で格別なものだからです。
投資を始めて一度でも配当金や分配金を受け取ったことがあれば、その気持ちを理解いただけると思います。
配当金は精神面にもよい効果をもたらすため、多くの方がその魅力に惹かれます。
VTへ投資しながら配当金生活を目指すのは大変!
一方で、1つ大きな問題があります。
それはVTの配当利回りがそこまで高くないことです。
最近のVTの分配金利回りは2%前後です。
仮に120万円(月10万円)の分配金を得ようとすれば、投資資金は6,000万円もの大金が必要です。
しかも実際には税金が引かれるので月10万円の手取りにすらなりません。
120万円÷2% = 6,000万円
したがって、VTのみで配当金生活を目指せるのは以下のような限られた人だけです。
- 多額の投資資金を持っている方
- 生活が極端に低くても大丈夫な方
- 上記2つの組み合わせ
つまり、一握りの方しかVTのみで配当金生活を目指すことはできないのです。
そこでより配当利回りの高い高配当株などを組み合わせていく必要があります。
全世界株式をコアにした配当金生活を目指すメリット
ここではVTを投資のコアにして配当金生活を目指すメリットをご紹介していきます。
VTの配当利回りは低いため、最初から配当利回りの高い高配当株へ投資した方がよいという意見もあるかもしれません。
しかし、以下のような観点からVTをポートフォリオの中心に組み合わせるのも悪くないと言えます。
抜群の安心感がある
投資の世界に身を置いていれば、将来はインドや中国が伸びるとか、米国が今後もリターンが高いなど様々な意見に出会します。
しかし、実際のところは誰にも答えなんて分かりません。
その点、全世界株式をコアにしていれば、多くの国が投資対象になるため、平均点を狙うことができます。
米国以外の国が伸びてもその恩恵を得られるし、米国がこのまま高いリターンを得たとしてもVTには多くの米国株が含まれます。
仮に残りの高配当株への投資で失敗しても、コアの全世界株式の部分は残るので、全体として致命傷を防ぐことができます。
トータルリターンが高い傾向
VTは投資対象に成長株を含むので、値上り益と配当の合計であるトータルリターンでは高配当株を上回る傾向にあります。
高配当株の多くは配当を安定的に出す成熟企業が多く、大きな株価上昇は期待できないことが多いためです。
例えば、米国株全体へ投資するVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)と米国の高配当株へ投資するVYM(バンガード・米国高配当株式ETF)のリターンを比較してみましょう。
VTI:12.27%/年
VYM:10.12%/年
注:2024年3月末時点の10年リターン
このように同じ米国株への投資であっても、成長株を含むVTIの方が大きなリターンがあります。
特に若い世代から投資で資産形成するなら、成長株も投資対象に含めた方が長期的には大きく資産を増やせる可能性が高いのです。
高配当株への投資だけでは逆に配当金生活へのゴールが遠のく可能性すらあります。
意外と増配率が高い
VTは意外と増配率が高いです。
2013年から2023年の10年間で考えると6%近い増配率があります。
VTの増配率:5.77%/年
このように長期的にはVTのような全世界株式でも分配金は増配されますので、受け取る分配金をどんどん増やすことができます。
どっちにも舵を切れる
資産形成は長期戦です。
将来みなさんの置かれている状況がどのようになるかなんて誰にも分かりません。
自分は生涯独身だと考えていても、結婚して子供を持つかもしれません。あるいは、不幸にも病気で働けなくなるかもしれません。
配当金を受け取って使っていった方がよいのか、資産の最大化を目指した方がよいのかは各々の状況により異なります。
皆さんが置かれた状況に合わせてVTと高配当株への投資割合を微調整していけばよいのです。
全世界株式をコアに配当金生活を目指すデメリット
一方で、当然ながらVTを投資の中心に据えて配当金生活を目指すことにはデメリットもあります。
配当金生活到達までに時間がかかる
上述の通り、VTの配当利回りは2%程度しかありません。
配当利回りが低いので十分な配当を受け取るには相当な投資資金が必要になります。
いきなり多額の投資資金を準備できる人は稀でしょうから、毎月のお給料からコツコツ投資をしていくことになります。
投資に回せるお金が少ないと配当金生活の実現までに数十年という年月がかかり、配当金生活を目指していたら定年を迎えてしまったという事態にもなりかねないのです。
増配が安定しない
高配当株と比較して配当が安定しないというデメリットがあります。
以下はVTの年間分配金の推移ですが、コロナショックのような不況時には減配しています。
一方で、高配当株ETFであるVYMのような銘柄はコロナショックでも増配を続けています。
一時的ではあるものの、不況時に受け取る配当金が大きく減ってしまう可能性があります。
どっちつかずの中途半端で終わる可能性も
VTをコアに配当金生活を目指す場合は入金力や投資期間がものを言います。
そこまで多くの配当金をもらえずに途中で老後資金の準備へ切り替えないといけなくなるかもしれません。
それなら、最初から配当金も再投資できる投資信託で運用したほうが効率的です。
また、お金を使わずに老後までたっぷり貯めても、若い時のように使うことはできません。
必要以上に老後資金を準備してしまい、今の生活を疎かになってしまうような中途半端な形で終わる可能性があります。
外国税額控除の手続きが面倒
VTのような米国ETFには二重課税の問題があります。
VTから受け取る分配金は米国の10%の税金を払ったのち、日本の税金が差し引かれます。
したがって、以下のように分配金の手取りは70%程度になってしまいます。
(1-10%)x(1-20.315%)=71.7165%
この二重課税を是正するためには確定申告(外国税額控除)が必要です。
会社員などで普段確定申告をしていない方からすれば、毎年この手続きのために確定申告することを面倒に感じる方もいるでしょう。
VTへの投資をコアに配当金生活を目指す!
VTへの投資をコアに配当金生活を目指すなら、ポートフォリオの半分程度をVTにするのがおすすめです。
半分を全世界株式への投資でがっちりと固め、残りは高配当株などへ投資していくのです。
全世界株式の部分は一生持ち続ける覚悟で保有し、細かな方針変更は残りの50%の中でしていけばよいでしょう。
そうすれば、例えば米国や日本の高配当株の低迷などがあっても、VTを保有していることが精神的な支えになるでしょう。
米国高配当株ETFがおすすめ
高配当株で運用する50%の部分は米国の高配当株ETFがおすすめです。
例えば、VYMであれば10年以上連続で増配しています。増配率も高く値上り益も狙えます。投資期間を十分確保できる若い方にもおすすめです。
また、増配系のETFも面白いでしょう。特に最近東証に上場した2014は配当利回りは2%台ですが増配率は非常に高いのが特徴です。
しかも、外国税額控除も自動調整してくれるので面白い存在になるでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。