海外赴任などで海外在住になると、日本の証券会社で受け取る配当金はどうなるのでしょうか?
下記記事で海外出国中に証券口座を維持できるかどうかをご紹介しました。
「楽天証券」であれば、株の売買はできなくなるものの、出国中も特定口座で一部の株や債券を保有し続けることは可能です。この場合、出国中にも定期的に株から配当金を受け取ることになります。
「これらの配当金は一体どのように扱われるのでしょうか?」
本記事では海外転勤や海外セミリタイアした場合の配当金の取り扱いについてご紹介します。
海外出国中に受け取る配当金はどうなるのか?
楽天証券など一部の証券会社では、海外出国中も特定口座で株を保有することが可能です。しかし、下記に示す通り基本的な取引は制限されます。
取引:出国中は売買ともに不可
入出金:登録された出金先金融機関への出金のみ可能
注:楽天証券の場合
海外在住の場合は住民税は不要!
海外在住中も出国前と同様に、受け取る配当金は源泉徴収された上で口座に振り込まれます。基本的に確定申告などの手続きも必要ありません。
ただし、源泉徴収される税率に違いが生じます。
通常は特定口座で受け取る配当金には20.315%分が源泉徴収されます。
日本居住時に支払う税金
- 所得税:15%
- 復興特別所得税:0.315%(所得税×2.1%)
- 住民税:5%
- 合計:20.315%
しかし、出国して日本の非居住者になると、上記のうち住民税を支払う必要がなくなります。なぜなら、日本に住んでいないからです。
海外出国中に支払う税金
- 所得税 15%
- 復興特別所得税 0.315%
- 合計:15.315%
つまり、住民税の5%分は差し引かれないので、通常よりも多い配当を受け取ることができるのです。
租税条約によっては所得税率も下がる!
日本は二重課税の除去や脱税への対応のために各国と「租税条約」を交わしています。
出国先との間に「租税条約」がある場合、所得税15.315%の税率を下げることができるかもしれません。
下記に租税条約における限度税率(配当の場合)の事例を示します。
限度税率10%:アメリカ、インド、オーストラリア、中国、ベトナム、UAE、ポルトガル等
限度税率15%:シンガポール、ニュージーランド、マレーシア、カナダ、韓国、フィリピン、インドネシア等
出典:財務省HP
特に10%の限度税率が設定されている国へ出国するのであれば、配当に対して10%の税金を納めるだけでよくなります。つまり、約5%分の所得税を抑えることができますから、ぜひこの制度を活用したいところです。
なお、これらの税率を適用するためには「租税条約に関する届出(配当に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)」という手続きをする必要があります。詳しくは下記国税庁のHPでご確認いただければ幸いです。
参考:国税庁HP
まとめ
いかがでしたでしょうか。
出国中に受け取る配当金は所得税(復興税含む)のみが源泉徴収されます。また、出国先との間に租税条約がある場合は、所得税率を10%などに下げることができるかもしれません。
ただし、国際税制は非常に複雑です。また、米国のように出国先で納税の必要がある国もあります。特に多額の資産をお持ちの方は、国際税制に精通した税理士の方に相談するのがよいでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。