楽天SCHDの人気が止まりません。
楽天SCHDは2024年9月末に販売が開始された新しい銘柄です。
発売から1ヶ月ちょっとたった11月上旬にはすでに残高が500億円を突破しました。
本銘柄は安定的な分配金の受け取りと増配が期待できる銘柄です。
リタイアが迫っている人や配当金の受け取りを希望される方にとっては有力な選択肢になるでしょう。
本記事ではこの楽天SCHDで配当金生活をするのはよいのかというテーマで解説していきます。
楽天SCHDってどんな銘柄?
基本情報
楽天SCHDの正式名称は「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」です。
なぜ楽天SCHDと呼ばれているかと言うと、本銘柄が米国市場に上場するSCHD(シュワブ・米国配当株式ETF)という銘柄をひたすら購入する投資信託だからです。
このSCHDは「Dow Jones U.S. Dividend 100 Index」という指数に連動する投資成果を目指します。
本指数は銘柄選定に以下の基準を採用しています。
- 10年以上連続増配
さらに配当成長率や自己資本利益率(ROE)なども加味して投資銘柄が選定されます。
つまり、SCHDを購入することで安定的に配当を増やしている優良銘柄へ投資ができます。
SCHDは米国では非常に人気のある銘柄で、純資産総額は2024年9月末時点で600億ドル以上(日本円で10兆円程度)もあります。しかしながら、日本の証券会社からは今まで投資ができませんでした。
今回楽天から間接的に投資する銘柄が誕生したことで、多くの投資家から注目を集めています。
投資銘柄
指数に「100」とある通り、本銘柄は約100銘柄で構成されています。
下表に投資上位10銘柄を示します。
順位 | 銘柄 | 構成比 |
---|---|---|
1 | Home Depot, Inc. | 4.36% |
2 | Verizon Communication Inc. | 4.25% |
3 | BlackRock, Inc. | 4.20% |
4 | Cisco System, Inc. | 4.20% |
5 | Chevron Corporation | 4.07% |
6 | Bristol-Myers Squibb Company | 4.07% |
7 | Pfizer Inc. | 4.00% |
8 | Lockheed Martin Corporation | 3.99% |
9 | Texas Instruments Incorporated | 3.97% |
10 | AbbVie, Inc. | 3.93% |
注: 2024年9月末時点の情報を基に作成
本指数の基本方針として1銘柄の投資割合は4%程度を上限に設定しているため、ずば抜けて高い割合の銘柄はありません。
また、S&P500指数の常連であるAMAZON、APPLE、Nvidiaなどの銘柄は含まれていません。逆に言えば、S&P500とは違った銘柄に比重を置いた投資ができます。
セクター
次にセクター比率を下表に示します。
No. | セクター | 割合 |
---|---|---|
1 | 金融 | 18.2% |
2 | ヘルスケア | 15.8% |
3 | 生活必需品 | 14.0% |
4 | 資本財 | 13.5% |
5 | エネルギー | 11.9% |
6 | 一般消費財 | 9.7% |
7 | 情報技術 | 8.8% |
8 | 通信サービス | 4.9% |
9 | 素材 | 3.1% |
10 | 公共事業 | 0.0% |
注: 2024年9月末時点の情報を基に作成
金融セクターの割合が最も高く、全体の約20%を占めます。
また、安定的に増配している企業が選定されていることもあり、ヘルスケアや生活必需品などの不況に強いディフェンシブセクターも多く含まれています。
配当利回り
配当金生活を目指す上で重要になるのが配当利回りです。
なぜなら、配当利回りが低いと配当金生活を送るのに必要な配当金を確保するのに大金が必要になるからです。
2024年11月11日時点のSCHDの株価を元に計算した配当利回りは以下の通りです。
① 2023年の分配金を基準: 約3.05%
② 直近4回の分配金を基準: 約3.36%
このようにSCHDは増配銘柄を投資対象にしている上に、3%以上の高い配当利回りがあります。
一方で、SCHDに近いコンセプトの銘柄として有名なのがVIGです。
こちらも10年連続増配企業を投資対象にしていますが、配当利回りはSCHDよりも低く、2%を切る水準です。
増配率
そして、SCHDの最も大きな特徴である増配率についてご紹介します。
SCHDの年間分配金の推移を下図に示します。
2011年の上場以来一度も減配したことはありません。SCHDは右肩上がりで分配金を増やし続けています。
次に四半期ごとの分配金推移です。
毎期のように増配を繰り返していることが分かります。
また、2012年〜2023年で増配率を計算するとなんと約11%/年にもなります。
これは約6年で分配金が2倍になる計算です。ただ保有するだけでどんどん分配金を増やすことができます。
リターン
SCHDは増配率や配当利回りだけではありません。
SCHDは下図のように株価上昇も狙える銘柄です。
出典:Yahoo finance
株価上昇と配当の両方を含むトータルリターンは以下の通りです。
銘柄 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 |
---|---|---|---|---|
SCHD | 29.17% | 6.73% | 12.71% | 11.52% |
VYM | 31.15% | 8.95% | 10.79% | 9.90% |
VIG | 29.48% | 7.86% | 12.32% | 11.62% |
VOO | 37.98% | 9.04% | 15.23% | 12.96% |
注:2024年10月末時点の情報を基に作成
そしてSCHDは高配当ETFであるVYMよりも高いリターンがあります。
VOOと比較すれば若干劣るものの、VIGとはほぼ同じリターンです。配当を安定的にもらいながら大きなリターンが得られる銘柄です。
楽天SCHDで配当金生活はできるのか?
それでは楽天SCHDで配当金生活を目指すことはおすすめできるのでしょうか?
結論として、楽天SCHDは配当金生活を目指す上で有力な選択肢になる銘柄だと言えます。
以下では本銘柄へ投資するメリットやデメリットなどについて解説していきます。
楽天SCHDで配当金生活するメリット
高い増配率が期待できる
まず大きなメリットが高い増配率がある点です。
配当金生活を始めると労働収入が極端に減るため、安定的に分配金を受け取ることが重要です。
そうでなければ元本を取り崩さなければ生活資金を捻出できなくなるからです。
この点でSCHDは同じく増配銘柄であるVIGや高配当銘柄であるVYM以上に高い増配率があります。また、上場してから一度も減配したことがない点も心強いでしょう。
つまり、よほどのことがない限り減配にはならず、年々受け取る配当金を増やすことができます。
SCHDの増配率は約11%/年でした。将来はわからないものの、この増配率が継続した場合は6年程度で受け取る分配金は2倍になります。
一旦楽天SCHDで配当金生活ができるくらいの資産を貯めてしまえば、金銭面での失敗はほぼないと考えてよいでしょう。
株価の値上がりも期待できる
SCHDは高い増配率に加えて、株価上昇も狙えるのが魅力です。
配当金生活を送っていれば、色々と心境の変化があるかもしれません。
例えば、再び会社員として働き始めたくなったりするかもしれないのです。
その時に配当金に全振りしている銘柄ばかりでは、資産形成の観点からマイナスになる可能性があります。なぜなら、配当金の再投資は税制面で不利なることが多いからです。
一方で、楽天SCHDの場合は、配当利回りが3%程度あるにもかかわらず株価上昇もかなり見込めます。
このバランスがちょうど良いのです。
これがVIGの場合は配当利回りが2%以下と少なく、分配金だけで生活していると老後に資産を残しすぎる可能性があります。
SCHDなら将来への仕送りもしながら、それなりの配当を受け取れるのです。
二重課税も自動調整
VIGやVYMなどの米国ETFを直接購入して配当金生活を目指す方法もあります。
しかし、この方法よりも楽天SCHDを活用した方がよい部分があります。それが二重課税への対応です。
著者もVYMやVIGなどの米国ETFをかなりの割合保有しています。
しかし、四半期ごとに受け取る分配金は米国の10%が差し引かれた後に日本の税金が引かれるため、以下の通り受け取る分配金は大きく下がってしまいます。
(1-10%)x(1-20.315%)=71.7165%
普通はこの二重課税を是正するために確定申告(外国税額控除)が必要です。
一方で、楽天SCHDなら確定申告せずとも二重課税を是正してくれます。
実際に私もこの自動調整に該当する銘柄、例えば1655(iシェアーズS&P500米国株ETF)を保有していますが、何もせずとも分配金受け取り時に自動調整してくれるので非常に楽です。
楽天SCHDで配当金生活をするデメリット
分散が少ない
SCHDの構成銘柄は米国の約100銘柄で構成されています。
当然ではありますが、数千銘柄で構成されているオルカンなどと比較すれば、銘柄数はかなり少ないです。
そのため、楽天SCHDのみを購入して配当金生活を目指すことを少し不安に感じるかもしれません。
したがって、本銘柄だけではなく別の銘柄を組み合わせて投資することを検討する必要があるでしょう。
為替の影響
米国企業のみへの投資ですから、ドル円の為替の影響を受けてしまいます。
日々の生活を日本円で決済しているのなら、やはり為替は生活に大きな影響を与えます。
年々増配は見込めるものの、大きく円高になれば一時的に分配金が減少することもありえます。
配当金生活を送る上で為替による多少のブレは考慮しておく必要があります。
配当金生活に必要な投資額
それでは楽天SCHDへ投資して配当金生活を目指すのに必要な投資額を検討してみましょう。
総務省が実施している家計調査年報(2023年)によれば、単身世帯の生活費は月17万円程度です。これは年間200万円に該当します。
先ほどご紹介した直近4回の配当利回り3.36%で考えると必要資金は以下の通りです。
200万円÷3.36%=5,952万円
したがって、約6,000万円の資産を作ることができれば、楽天SCHDで配当金生活ができると言えます。
下表は各リターンにおいて6,000万円を達成するために必要な期間と毎月の積立投資額をまとめたものです。
4%/年 | 5%/年 | 6%/年 | 10%/年 | |
---|---|---|---|---|
15年 | 24.4万 | 22.4万 | 20.6万 | 14.5万 |
20年 | 16.4万 | 14.6万 | 13.0万 | 7.9万 |
25年 | 11.7万 | 10.1万 | 8.7万 | 4.5万 |
30年 | 8.6万 | 7.2万 | 6.0万 | 2.7万 |
月10万円近い投資をしても25年近い年月がかかりますので、6,000万円の資産を作ることは決して楽ではありません。
一方で、楽天SCHDのここ10年のリターンは10%/年を超えています。仮に相場環境が良ければ、月10万円の投資で20年以内に配当金生活を達成できる可能性もあります。
増配により様々な選択肢が取れる
人によっては「分配金200万円だけでは生活なんてできない!」と考えるかもしれません。
しかし、忘れてはいけないのはSCHDには大きな増配がある点です。
仮にSCHDの11%/年の増配が今後10年継続すると仮定すると、リタイア時に200万円あった分配金を以下のようにどんどん増やすことができます。
3年後:274万円
5年後:337万円
7年後:415万円
10年後:568万円
為替の変動は無視していますし、今後も10%/年以上の高い増配率が継続するとは思えません。
しかし、それでも5年もすれば337万円(月28万円)、10年もすれば568万円(月47万円)へと大幅に増える可能性を秘めています。
このように分配金はどんどん増えていきますから、ある程度の資産を作ったら以下のように徐々に配当金生活へ移行するという戦略も取れます。
- 若くて体力がある時は簡単な労働をして足りない生活費を補う。
- 分配金が増えるに従って、労働の量を減らしていく。
若くて元気なうちは分配金で基礎生活費を賄い、労働で足りない分を補えばよいのです。
数年もそんな生活をしていれば、増配により受け取る分配金は月数万円単位で増えていきます。
そうしたら労働量を減らすこともできますし、働き続けるなら生活水準を上げることもできます。
この繰り返しです。
しかも、元本も増えていくので、老後には十分すぎるほどの資金を確保することができるでしょう。
楽天SCHDはそんなすごいパワーを秘めた銘柄なのです。
まとめ
本記事では楽天SCHDで配当金生活ができるのかというテーマで解説しました。
楽天SCHDが投資するSCHDは、高い増配率に加えて3%程度とそれなりに高い配当利回りがあります。
加えて、株価上昇も期待でき、トータルリターンでもS&P500に負けないレベルにあります。
楽天SCHDは投資銘柄数が少ないのが気になる点ですが、配当金生活のコアに据えることができる銘柄だと言えるでしょう。
SCHDの高い増配率(約11%/年)が今後も継続するとは限りませんが、配当金生活突入後もどんどん受け取る分配金を増やしていける可能性を秘めています。
以上、ご参考になれば幸いです。