投資に慣れてくるとVOOやVTIなどの米国ETF(上場投資信託)の名前を耳にし始めるでしょう。
そして多くの方は自分もそういった商品を購入してみたいと思うようになります。
実は私もその一人で、現在最も保有している銘柄は日本株ではなく米国ETF(上場投資信託)です。
一方で、米国ETFを保有している場合は米ドルでのやり取りになりますから、日本で生活するのであれば為替の影響は無視できません。米国ETFへ投資した場合の出口戦略も非常に重要なのです。
そこで本記事では米国ETFを中心に投資した際の出口戦略に焦点を当てて解説していきます。
米国ETFは投資の強い味方
米国ETFをコツコツ購入していくことは個人投資家にも推奨できる手法です。
まずは米国ETFへの投資のメリットを挙げてみましょう。
- 分散投資が可能
- 選択肢が多い
- 純資産総額が大きい
- 経費率が安い
米国ETFには世界経済の中心である米国の企業へ投資する銘柄だけでなく、全世界株式や債券、ゴールドなど、国内市場に上場する銘柄とは比べ物にならないくらい多種多様な銘柄があります。
また、ETFは1つの銘柄を購入するだけでも米国株数千銘柄など広く分散投資ができます。加えて、売買高や純資産総額が大きいのも特徴です。
米国株へ投資するVOOやVTI、米国の高配当株へ投資できるVYM、SPYD、HDVなどの銘柄は一度は耳にしたことがあるでしょう。こういった銘柄は手数料が安く実績もあるため、長期保有される方が多数いらっしゃいます。
出口戦略をどのように設定するか?
一方で、米国ETFへ長期に渡って投資する場合、その出口戦略もよく検討しておく必要があります。
なぜなら、貯めるだけ貯めてそのまま死んでしまってはもったいないからです。
この投資の出口戦略に悩みを抱えている方も多いでしょう。しかし、特に気にする必要はありません。基本的には分配金を使い続けるだけでよいからです。
資産形成期
資産形成期は給料の一部を投資へ回し、米国ETFの株数をひたすら積み上げていくことに専念します。
多くの投資信託とは異なり、ETFの場合は分配金を受け取ることができます。受け取った分配金もできるだけ再投資していきましょう。
そうすることで雪だるま式に資産を増やしていくことができます。
一方で、子育て等でお金が必要な場合は、受け取った分配金は日々の生活に使用していくのもありかもしれません。
リタイア後
資産形成時にひたすら米国ETFを購入したのなら、老後を迎える頃にはまとまった分配金を受け取れるようになっているでしょう。
投資期間にもよりますが、年間数十万円から数百万円の分配金を受け取れるようになっているはずです。
リタイア後は基本的にはこの分配金と年金などを中心に生活します。
医療費や住宅の購入などでまとまったお金が必要になった場合は米国ETFを売却すればよいですが、そうでない場合は分配金を使い続けるだけにするのです。
米国ETFの出口戦略の考え方
上述の通り、リタイアした後も基本的に分配金を使い続けるだけで元本の取り崩しを想定していません。
もちろんまとまったお金が必要になれば売却して構いません。しかし、そうでないなら個人的には老後になっても分配金を使い続けるだけのスタイルがおすすめです。
なぜそう考えるのか、以下にそのポイントをまとめます。
お金を使い切る必要はない
よくお金は使い切って死ぬべきだと言います。
もちろんその通りだと思います。できるのなら私も預金残高0円ぴったりで死にたいものです。
しかし、それは無理な話です。普通はいつ死ぬかなんて分からないからです。
ではお金を使いきれなかったら損したと言えるのでしょうか?
そうではありません。一定のお金を保有していることは精神的に良い影響をもたらします。
例えば、お金がなくなって日々の生活に困窮する恐怖を背負う必要がなくなります。つまり、お金があることで落ち着いて生活ができるのです。
重要なことはお金に困らずに、心配せずに人生を全うできるかということです。一定の資産を保有することで精神面の余裕を買っていると考えればよいのです。
資産は雪だるま式に増えていく
投資をしているとよく雪だるま式に資産が増えていくと言います。
例えば年利5%のリターンで運用ができた場合、運用額が大きいほど1年後に増える金額も大きくなります。
100万円→5万円
1000万円→50万円
1億円→500万円
寿命が大きく延びていることもあり、老後と言ってもかなりの長期間に及ぶ可能性があります。
使わないお金があるのなら長期で運用し続けた方がお金を大きく増やせる可能性があります。
配当のみを使った生活をしていれば、長い老後でも緩やかに資産を拡大しながら生活することができます。そういう状態を作れれば、資産が枯渇する可能性は極めて低くなります。
老後に適切な判断ができるとは限らない
老後にはそれまで貯めた資産を取り崩しながら生活することが推奨されます。
例えば、4%ルールと言って、リタイア時の資産の4%分を毎年取り崩しながら生活するようなスタイルもあります。
一方で、老後で気になるのはいつまでしっかりした判断ができるかという点です。
不況時に運用商品を売却してしまうと大きく資産が減少してしまいます。高齢になるとこのような局面で取り崩し額をうまく調整することは難しいかもしれません。
一方で、分配金は不況になれば自動的に減るし、好景気であれば増配されます。分配金はある意味で自動で取り崩し額を調整してくれる機能があるのです。
しかも、分配金は一般的に株価の変動と比較して安定しています。
判断の鈍った老後でも配当金であれば安心して生活できるのです。
為替を気にする必要はない
米国ETFを購入すると分配金はドルで受け取ることになります。また、商品を売却する時もドルで入金されます。
そうなると気になるのが為替のリスクです。
円安側に動けば使える日本円は増えますが、円高になれば使える日本円は減ってしまいます。
一方で、人口減少も影響して世界での日本の地位はどんどん低下しています。今まで来なかった国からの観光客が大幅に増えていることもその状況を表しています。つまり、日本はどんどん安い国になっています。
したがって、一時的な円高はあるかもしれませんが、長期的に見れば円安側に動く可能性が高いでしょう。
また、長期で運用すれば為替の影響をかき消すくらい元本も成長しているはずです。
本当に必要になったら売却すればよい
基本的にリタイア後も分配金を使い続ければよいと説明しました。
しかし、これはあくまで理想です。もしもまとまったお金が必要になったのであれば、米国ETFを一部売却すればよいだけの話です。
基本的に分配金のみを使う生活をしていれば、いざ売却が必要になった頃には株価は購入時よりも大きく育っている可能性が高いです。その時に必要なお金を捻出することができるでしょう。
著者の出口戦略
ここでは著者の出口戦略をご紹介していきます。
著者も本記事でご紹介した通り、リタイア後は米国ETFから受け取る分配金で生活する想定でいます。
全世界株式を投資のコアにする
全世界の株式へ投資が可能なVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)という銘柄をポートフォリオの中心にしています。
本銘柄は全世界の株式へ幅広く投資ができる米国ETFです。
長期での運用を考えた場合、世界経済の中心である米国に取って代わる国が出てくるかもしれません。私自身はその際に銘柄の入れ替えをうまくやれる自信がありません。
一方で、VTなら各国の投資割合を自動で調節をしてくれますので、安心して長期保有ができます。
また、VTにはハイテク系の企業など成長性の高い企業も多数含まれていますので、長期で運用できれば分配金よりも株価の値上り益を大きく得られる可能性が高いです。
米国高配当株ETFの割合を増やす
コツコツと投資を続けてきたおかげで、幸いにもVTの評価額は数千万円規模まで育ちました。
今後何十年とVTを売却しなければ、数十年後には老後資金としては十分な金額に増えているでしょう。
そこでより分配金を得られる高配当株ETFへの投資割合を増やしています。
高配当株ETFであれば配当利回りが3%~5%程度の銘柄があります。こう言った銘柄への投資を増やすことで受け取る配当金の額を増やせます。
一方で、配当が大きい代わりに成長性の劣る企業も含まれています。したがって、先にご紹介したVTよりは株価の上昇は期待できないかもしれません。
しかし、これでよいのです。リタイア後は分配金を使う想定ですから、分配金を増やす方向に舵を切っているのです。
若いうちは成長性の高い銘柄へ
投資期間が長く確保できる若いうちはVTのような成長性の高い株式を含む銘柄への投資がおすすめです。
できるだけ早いうちに株数を積み上げておけば、あとは放置しても老後資金の心配はなくなるからです。
そしてリタイアが見え始めてきたら分配金をたくさんもらえる高配当株ETFを増やしていくことでキャッシュフローを強化します。
これによりリタイア後には株価の上昇も分配金の受け取りも期待できるポートフォリオが作れます。
まとめ
本記事では米国ETFへ投資した場合の出口戦略について解説しました。
米国ETFへ投資すると分配金を受け取ることができますので、基本的にはこの分配金のみを使ってリタイア生活を過ごすのがおすすめです。
もちろん、必要になったのなら売却して構いません。若いうちから米国ETFへ投資をしてきたのなら、株価は購入時よりはるかに高くなっているはずですから十分なお金を確保できるでしょう。
確かに分配金だけを使っていると多額のお金を残して死んでしまう可能性もあります。しかし、お金は精神的なゆとりをもたらすものです。お金に困らずに、そして心配せずに生活できる環境を作れたのなら十分お金の役目を果たしたでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。