少子高齢化や日本の財政難などのニュースを目の当たりにすれば、老後の生活に不安を抱えている方も多いでしょう。
特に現役世代の方は老後資金の確保をどのように進めていくべきか大きな課題となっているはずです。
そんな老後資金問題を解決する1つの答えになり得るのが、老後資金の一部を配当金で補完するというものです。
本記事ではこの方法が最適である理由やその考え方をご紹介していきます。
何もたくさんの配当金を受け取る必要はありません。老後の配当金生活に向けて若いうちからコツコツ準備を進めていけば、老後の不安を減らすことができるはずです。
配当金生活とは?
配当金生活とは株式などから受け取る配当をベースに生活するスタイルを指します。
多くの方は会社員として働き、会社から受け取る毎月のお給料で生活をしています。
一方で、株を買い集めて配当金をたくさん受け取れるようになれば、株の配当だけでも生活費を賄えるようになります。そうすれば、会社を辞めても生活していくことができます。
通常は高い配当利回りの高配当株を買い集めていき、配当金が生活費を上回るような状態を目指していきます。
しかし、全ての生活費を配当金で賄うためには莫大な投資資金が必要になります。
例えば、年間300万円の配当金を受け取ろうとすれば、配当利回り3%の株へ投資したとしても1億円もの大金が必要になります。
1億円✖️3%=300万円
普通の方はここまでの投資資金を確保するのは無理な話です。
老後資金の一部を配当金で補うという考え方!
そこで考えたいのが、老後資金の一部を配当金で補うという考えです。
例えば、国から受け取る年金に加えて、月3~4万円程度を配当金として受取ながら生活していくのです。
以下ではその考え方について整理していきます。
公的年金だけでは足りない
まず考えなければいけないのが、老後の生活費は公的年金、すなわち国民年金や厚生年金だけでは足りないという点です。
会社員として働いている方は厚生年金に加入しており、こちらは給料によって将来の支給額が変わります。
一方で、基本的に全員が加入する国民年金の支給額は以下の通りです。
66,520円/月
注:令和5年4月分からの支給額
残念ながら、普通の方はこの年金だけで生活することは厳しいでしょう。
もちろん会社員の期間があれば、厚生年金の支給額もあるためこの金額よりは高くなります。
しかし、厚生労働省が実施した「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和3年度)」によれば、厚生年金保険受給者の平均年金月額は15万円弱と言われています。
これでもギリギリ生活できるかどうかのラインです。
また、少子高齢化なども影響して年金の支給開始年齢を遅らせる、あるいは国民年金保険料の支払い期間の延長なども検討されています。
国が存続する限り年金制度自体はなくなることはないでしょうが、少なくとも支給額が増えることは考えられません。
したがって、年金を受け取る時期になっても働き続けるか、それまでに十分な金融資産を確保しておく必要があるのです。
金融資産の取り崩しはハードルが高い
それではそれなりの貯金を老後資金として準備しておけばそれで問題は解決なのでしょうか?
実はこれも人によってはうまくいかない可能性があります。
例えば、老後資金として1,000万円の貯金を準備していたとします。
老後に毎月10万円取り崩していくと、8.33年で貯金はなくなってしまう計算です。
1,000万円÷10万円÷12ヶ月=8.33年
65歳からこの生活をすれば73歳でお金はなくなります。寿命がいつ尽きるか分からない状態で、貯金がどんどん減っていくプレッシャーと戦わなければいけません。
また、投資信託の取り崩しも同様です。
最近は低コストのインデックスファンドを積み立てる人が増えています。
少額から投資ができますし、配当金は自動で再投資される銘柄もあるため、資産を増やす上では効率的でおすすめです。
一方で、資産を取り崩していく際には同様の問題が発生します。
せっかく増やした資産を売却していく必要がありますので、この行為に抵抗を感じる方も多いのです。
配当金なら自動分配してくれる
そこで考えたいのが公的年金では足りない生活費を配当金で補う戦略です。
配当金であればこちらが何かすることもなく自動で毎年お金を振り込んでくれます。
また、配当金は年々増加傾向にあります。
時間が経つにつれ増配により配当金が増えていく傾向にありますから、若いうちから準備しておけば老後にそれなりの配当金を受け取ることができます。
そして、配当金は不況時にも強さを発揮するという特徴もあります。
配当金の変動は株価の値動きと比較してマイルドになる傾向があるのです。
不況になれば若干少なめの配当金へと自動で調節されます。これを自分でやろうとすれば、不況時は過度に少ない金額の取り崩しになってしまったり、逆に好況時にも取り崩しを抑えてしまう可能性があるでしょう。
不況/好況に応じて自動調節してくれる機能がありますので、配当金は全く手間がかからないのです。
税金面で大きなメリット
それだけではありません。老後に配当金生活を送ることは税金面でも大きなメリットがあります。
公的年金の受取
まず国民年金などの公的年金には「公的年金等控除額」があります。
この控除内で年金を受給した場合は基本的に所得が発生していないことになります。
控除枠は65歳以上で以下の通りです。
公的年金等の収入金額が330万円以下:110万円
出典:国税庁HP
110万円は月当たりに換算すれば10万円弱になります。
先にご紹介した国民年金の満額支給額は年間で約80万円ですから110万円の控除内に収まる計算です。
このように自営業の方で厚生年金に未加入であれば、受け取る年金は110万円の枠の中に収まってしまいます。つまり、税金について深く考える必要はなくなります。
配当金の受取
配当金は配当所得に分類されます。
通常は株式からの配当金は約20%の税金が発生します。証券会社で特定口座を開設していれば自動で税金が差し引かれてからご自身の口座へと入金されます。
一方で、配当所得は総合課税で申告することも可能です。
総合課税で申告すると所得税には48万円、住民税には43万円の基礎控除があります。
仮に公的年金が110万円に収まる方であれば、50万円程度の配当を受け取ってもほぼ所得がない状態になります。結果として、税金の還付を受けることができます。
このように年金以外の収入がない老後生活では、年金に加えて少額の配当金を受け取っても、ほぼ税金なしにすることができます。
2024年からは新NISAがスタート!
それだけではありません。2024年からは新しいNISAがスタートします。
成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 360万円/年 | |
240万円/年 | 120万円/年 | |
非課税期間 | 無期限 | |
最大利用可能額 | 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで) | |
開始時期 | 2024年〜(恒久化) | |
対象商品 | 株式・ETF・投資信託など | 一部の投資信託・ETF |
上表の通り、NISAには1,200万円分の成長投資枠があります。
こちらの枠の中では配当を出す株式やETFなども購入することができます。NISAで受け取る配当金は非課税で受け取ることができますし、そもそも所得が発生していないとみなされるので確定申告も不要です。
成長投資枠を若いうちからコツコツ埋めておけば、老後にはそれなりの配当金を非課税で受け取ることができます。
多くの方はこの枠を埋めるだけでも大変でしょうから、配当金にかかる税金はほぼ考える必要はないのです。
少額の配当金で老後資金を補完せよ!
上述の通り、老後に少額の配当収入があっても税金をほぼ払う必要はありません。
例えば、月4万円の配当金を受け取ることを目指したとします。
この場合、3%の配当利回りの銘柄であれば必要な投資資金は以下の通りです。
48万円÷3%=1,600万円
また、3.5%の銘柄であれば以下の通りです。
48万円÷3.5%=1,371万円
老後2,000万円問題より少ない金額でこのキャッシュフローを作ることができます。
もちろん、すぐに準備できる金額ではありません。しかし、早くから準備を進めれば決して難しい金額ではありません。
また、月4万円といえどバカにできません。毎月の水道光熱費や食費を賄うことができる金額です。
年金の受給額が少ない方であればこの4万円が毎月加わるだけでもかなりの助けになるはずです。
老後にそれほどお金はいらない
そもそも老後の生活費はそこまでかかりません。
体力も減るので旅行に行く気力もないし、食べる量だって若い頃と比較すれば減るでしょう。
したがって、年金に対して月5万円前後の配当金が加わるだけでも十分な生活ができる可能性が高まります。
なにも数千万円を準備しろと言っているのではありません。
月4万円の配当金を受け取るのに1,500万円程度の投資資金があればよいわけです。
以下記事でもご紹介した通り、時間をかければ月1万円ちょっとの投資でも十分達成できる金額です。
全て使い切って死ぬのは無理!
老後に株式から受け取る配当を使い続けるスタイルだと1つの問題があります。
それは元本部分を取り崩さないので、ある程度の資産を残して死んでしまうことです。
資産形成の分野で有名な本の1つにDIE WITH ZEROという本があります。
DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
こちらの本では「生きているうちに金を使い切ることを目指すべきだ!」と提言されています。老後にお金を残しすぎる方が多く、本来できたはずの経験を逃しているという指摘です。
ただ、こちらはある程度の資産がある方に当てはまることだと考えています。
今回ご紹介した老後の配当金生活では、1,000万円~2,000万円程度を運用しながら配当金を貰い続けて生活することを提案しています。
この程度の運用額を残して死ぬことは全く問題ないでしょう。なぜなら、お金を残さずに死んでしまうと逆に周りが困るからです。
自分が亡くなると誰かがお葬式をする必要があるでしょう。また、田舎で一軒家を保有していれば家の後始末などをしなければいけません。
このように何かと手間やお金がかかるものです。このくらいの金額は周りのために残せばよいのです。
重要なことは過度にお金を残すのではなく、自分がお金に困らない、ストレスフリーな老後生活を実現することなのです。
相続税もかからない
1,000万円~2,000万円前後の資産を残すのであれば相続税も気にする必要がありません。
相続税には3,000万円の基礎控除があります。また、相続人の数によって非課税枠は増えます。
3,000万円+600万円✖️法定相続人の数
2,000万円前後の資産であれば税金の心配をする必要もなく、子供などの次世代へ引き継ぐことができます。
このように2,000万円前後を運用して配当金を受け取りながら老後生活を送るスタイルは1つのロールモデルになりえます。
寿命はどんどん伸びており、老後の生活期間は延びる一方です。その中でいかにお金に困らずにストレスフリーで生きられるかを考えれば、老後の配当金生活こそ1つの回答になるはずです。
投資対象はETFを活用すればよい!
投資初心者の方や投資を始めたばかりの方は銘柄選定が高いハードルになります。
しかし、これも上場投資信託(ETF)を活用すればそこまで難しくありません。
例えば、世界経済の中心である米国の高配当株へ投資するVYM(バンガード・米国高配当株式ETF)などが1つの選択肢になるでしょう。
日本の高配当株では日経高配当株50ETF(1489)などの銘柄が多くの資産を集めています。
また、投資期間が十分確保できる方であれば増配株などで準備を進めておくのも面白いでしょう。
このような銘柄への投資を通じて、老後の配当金生活に向けてコツコツと準備を進めていけばよいのです。
以上、ご参考になれば幸いです。