世の中には数千万円の資産でセミリタイア生活をされている方がいます。
このような話題が出ると「そんな貧乏生活はしたくない」という批判が必ず出てきます。
確かに数千万円レベルでセミリタイアするのであれば、それなりの節約をしなければすぐに生活は破綻してしまうでしょう。
傍から見れば最低限のお金で生活しているため、生活保護の方が裕福だなんて言われることすらあるのです。
しかし、本当にそうでしょうか?
本記事では「セミリタイアは貧乏生活なのか?」というテーマで解説していきます。
セミリタイアに必要な資産とは?
巷で言われているような数千万円の資産で本当にセミリタイアは可能なのでしょうか?
数億円のお金がなければ会社を辞められないという意見もあります。当然お金があればあるほど余裕のある生活ができるからです。
しかし、問題は一般的な収入の方ではお金を貯めるまでに時間がかかってしまう点です。
数億円もの資産を貯める頃には定年を迎えてしまうかもしれません。
そこでまずはセミリタイアに最低限必要な資産を確認していきます。
平均の生活費は?
我々は毎月どの程度の支出で暮らしているのでしょうか?
総務省が実施した家計調査によれば、単身世帯と二人以上世帯の平均生活費は以下の通りです。
単身世帯:167,620円/月
二人以上世帯:293,997円/月
出典:家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)
単身世帯でも月17万円程度の生活費が発生します。
したがって、生活費の最低ラインとして年間約200万円(月17万円弱)を考えておくべきでしょう。
投資で資産所得を得る
投資をしていれば、株の値上がり益や配当などの資産所得を得ることができます。
株式主体の運用であれば一般的に4〜6%/年程度のリターンは十分に狙えると言われています。
実際に投資の世界では4%ルールというものが知られています。
これは「リタイア時の投資資産の4%を毎年取り崩しても、30年後に資産はなくならない」というものです。
つまり、一定以上の資金を投資で運用し、4%で取り崩している限りは、かなりの確率で持続的な生活ができるのです。
このルールに当てはめれば、200万円の資産所得を毎年得るためには5,000万円の資産が必要になります。
セミリタイアは緩く働くスタイル
セミリタイアは全く働かない生活スタイルではありません。
したがって、資産所得だけで全ての生活費を賄う必要はないのです。
そう考えると5,000万円よりも少ない資産でもセミリタイアが可能です。
例えば、リタイア後も月5万円程度を稼ぐつもりなら、労働から年60万円程度の所得を得ることができます。
このケースでは必要な資産は3,500万円まで下げられます。
労働収入:60万円
資産収入:3,500万円×4%=140万円
合計:200万円
よって、数千万円の資産でセミリタイアするというのは理論上は可能です。
少額なら稼ぐ手段はある
月5万円前後を稼ぐだけでよいのなら様々な手段があります。
週2~3日バイトすることでも達成できるでしょうし、隙間時間にウーバーイーツをするのもありかもしれません。
必要な分だけ稼いで、残りの時間は好きに過ごすことができます。
ですから、数千万円の資産でセミリタイアすることは実現可能だと言えるでしょう。
セミリタイアは貧乏生活なのか?
上述の通り、確かに数千万円あればセミリタイアを実行することは可能です。
しかし、その程度の資金では生活費は最低レベルでしかありません。
それではセミリタイア生活は貧乏生活になるのでしょうか?
答えはYesでもありNoでもあるでしょう。
確かにお金の面だけを見れば、質素な暮らしに見えるかもしれません。
しかし、精神面では十分リッチな生活をしていると言えます。なぜなら、自分で人生の選択をしているからです。
金銭面
「月17万円前後で生活するなんて何が楽しいんだ」と言われてしまうかもしれません。
確かにリッチな生活とは程遠いです。
しかし、セミリタイアしている人は無駄なお金を使わない生活が身についています。
同じ月17万円で生活していても、自分が必要なものにお金を使っているので幸福度が高いのです。
これは資産形成の過程で身につけた能力でもあります。セミリタイア資金を貯める過程でお金を貯蓄や投資に回すために節約生活が必要です。
そう言った生活を何十年と送る中で、自分にとって必要な支出とそうではない支出が明確になっていきます。
例えば、自炊はどうでしょうか?
外食を減らしてヘルシーな食事をしていれば、食費も落とせるし健康も手に入れられるので一石二鳥です。
食事を作ることが気分転換になってこれを楽しんで実践しているのであれば、周りから外食しないことを批判される筋合いはないのです。
これは貧乏生活とは全く違います。
自分にとって幸福度の高いお金の使い方を知っていれば、月17万円でも十分充実した生活を送れます。
精神面
精神面にも大きな違いがあります。それは自由度が高いことです。
多くの方は仕事をするのが嫌いなのではありません。
職場での上司や同僚との面倒な人間関係、強制的な転勤や部署異動、労働時間の長さなど、会社により様々な制限を受けることに耐えられないのです。
一方で、セミリタイアしてしまえば、労働からの収入は最低限でよいので、働き方も住む場所も自分の好きなように設計できます。
自らがそのような選択をして、自分の好きなように生きているので精神的に充実した生活ができるでしょう。
このようにセミリタイアは自らによって人生の選択しており、かつ主体的に行動しているので貧乏とは程遠い生き方です。
セミリタイアは一つの選択肢になり得る
程度の大きさはあるにしても、セミリタイア的な生き方はこれからの時代の選択肢の一つになるはずです。
インターネットやSNSが普及して稼ぐ手段は大幅に増えました。
また、AIの発達によって人間が関与すべき仕事は今後減っていくでしょう。
自分のやりたいことや好きなことにエネルギーを注いで、労働で稼ぐことを最小限にして自由度の高い生活をした方が精神衛生上よいのです。
何をしても文句は言われる
どんな生活を送ろうが文句を言われるのが日本です。
必死に働いて収入を上げれば、富裕層だとかずるいとか言われ、自由を求めてセミリタイアやFIREを目指せば社会のお荷物だと言われます。
日本ではみんなと同じかやや上の平均くらいでひっそり生きるのがよいのです。
ここが生きづらい社会を作っている一つの要因でしょう。
セミリタイアは決して貧乏生活ではありません。
周りを気にせず心身ともに充実した生活を送ればよいのです。
以上、ご参考になれば幸いです。